日本のメタボリックシンドロームの診断基準に大きく影響
場所 北海道北見市端野地区,有珠郡壮瞥町
端野・壮瞥町地図
開始年 端野町1977年,壮瞥町1978年
対象 40~64歳の男女
登録数 端野町(1977年):996例(男性475例,女性521例)
壮瞥町(1978年):1000例(男性469例,女性531例)
検査項目 血圧,24時間血圧,座位随時血圧,75 g経口ブドウ糖負荷試験,身長,体重,血液検査(総コレステロール,トリグリセライド,HDL-C,尿酸),心電図,胸部X線,問診など。
参考 端野・壮瞥町研究レビュー2007. Therapeutic Research 2007; 28(4): 513-525.
 端野・壮瞥町研究は,主に循環器系および代謝系の疾患をターゲットとした地域コホート疫学研究である。端野町(現・北見市端野地区)はオホーツク海沿岸に位置しており,恵まれた自然の中に広がる田園の町。農業がさかんで,なかでもタマネギは日本一の生産量と高品質を誇る。年間の平均気温は5~6 ℃だが,夏は30 ℃を越えることもあるなど四季を通しての温度差が大きい。一方の壮瞥町は支笏洞爺国立公園内に位置する火山と湖と温泉の町で,平均は冬-6 ℃,夏22 ℃と,北海道としては温暖な気候に恵まれている。
端野町
端野町。春まき栽培のタマネギが収穫を迎えていた
壮瞥町
壮瞥町。洞爺湖と有珠山

 これら2つの町が対象地区に選ばれたのは,研究開始当初に掲げられた「寒い地方では血圧が高い」という仮説を検証するためだった。この外気温と血圧に関する仮説は早々に否定されることとなったが,低温に曝露した場合の血圧の反応性と長期的予後との関連など,北海道ならではのユニークな検討が引き続き行われている。

 端野・壮瞥町研究の大きな特徴のひとつは,早い時期から糖尿病などの代謝系の因子に着目していることである。日本の疫学としてははじめて,健診対象者全員に糖負荷試験を行った。腹囲の測定も行っているため,いま話題となっているメタボリックシンドロームの正確な有病率やその推移といった検討が可能だ。日本のメタボリックシンドローム診断基準が作成される際には,端野・壮瞥町研究のデータが鍵となった。これからも,より長期的な変化や男女の性差などについて検討を重ねていきたいという。


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