虚血性心疾患の発症率や死亡率には大きな地域差がある。1950年ごろから,日本では心疾患による死亡が少ないかわりに脳卒中による死亡が多いこと,そして米国ではその逆のパターンを示すことなどが徐々に明らかになってきていた。
そこでNI-HON-SAN研究では,心血管疾患の発症率や危険因子の保有率などの日米間比較を行った。対象となったのは日本人と,ハワイおよびサンフランシスコに移住した人々。日本人と共通した遺伝的背景をもちながらも,移住を経て生活習慣や環境が大きく変わっているため,その影響を日本人と比較することが可能だからである。有病率や死因別死亡率を正確に把握するため,臨床診断や死因の決定には日米共通の基準が用いられた。
その結果,血圧に大きな差がない一方で総コレステロールは日本,ハワイ,サンフランシスコの順に高くなること,虚血性心疾患の発症率も日本,ハワイ,サンフランシスコの順に高くなること,脳卒中の発症率は日本がもっとも高いことなどが明らかになった。これらの結果は,食事や生活習慣が欧米化するにつれてコレステロール値が上昇し,虚血性心疾患が増加している可能性を示唆するものである。
・2008.3.05
[インタビュー]日米共同移民観察研究から日本人の心血管の明日を考える。
−心血管疾患に生活習慣が大きく影響することを示したNI-HON-SAN Study
・2008.3.05
[1988年文献] ハワイの日系人の冠動脈疾患死亡率は日本本土の日本人よりも40 %高かった
・2008.3.05
[1979年文献] 脳実質内の動脈硬化および脳梗塞は日本で多く,ウイリス動脈輪の動脈硬化はホノルルで多かった
・2008.3.05
[1977年文献] 心筋梗塞+CHD死の発生率は,日本<ホノルル<サンフランシスコ
・2008.3.05
[1977年文献] CHDリスクに対する危険因子の効きかたは,日本とハワイで同程度
・2008.3.05
[1975年文献] 日系アメリカ人男性のCHD死亡率は日本本土の日本人より高かった
・2008.3.05
[1975年文献] 総コレステロール,トリグリセリド,および血糖は, 日本<ホノルル<サンフランシスコ の傾向を示した