食文化と冠動脈疾患の関連を検討した初の国際共同研究

各地域を示す地図

対象 40~59歳の男性
場所 7か国16集団
日本: 田主丸(508人),牛深(502人),アメリカ: US Railroad勤務者(2571人),オランダ: ジュトフェン(878人),フィンランド: フィンランド西部(860人),フィンランド東部(817人),ギリシャ: クレタ島(686人),コルフ島(529人),イタリア: クレヴァルコーレ(993人),モンテジョルジョ(719人),Rome Railroad勤務者(768人),旧ユーゴスラビア: スラボニア(696人),ダルマチア(671人),ベリカ・クリシュナ(511人),ズレニャニン(516人),ベオグラード(538人)

地域ごとの検討を行う際には,以下の区分も用いられた。
北欧(フィンランド東部,フィンランド西部,ジュトフェン),南欧内陸部(ローマ,クレヴァルコーレ,スラボニア,ベオグラード),南欧地中海(クレタ島,コルフ島,モンテジョルジョ,ダルマチア),セルビア(ベリカ・クシュナ,ズレニャニン),米国,日本(田主丸,牛深)
開始年 1957~1964年(ベースライン健診)
登録数 12763人
調査項目 身長,体重,皮脂厚,仕事量,血圧,血中総コレステロール,喫煙習慣,食事調査
参考 Ancel Keys, "Seven Countries: A Multivariate Analysis of Death and Coronary Heart Disease", Harvard University Press (1980).
JAMA 1995; 274: 131-136.pubmed
http://www.sph.umn.edu/epi/history/sevencountries/
 Seven Countries Study(世界7か国共同研究)は1957年から開始された前向き疫学研究。7つの国における冠動脈疾患の発症率と生活習慣,とりわけ食事との関連を明らかにした,国際共同研究のパイオニア的存在である。日本からは,それぞれ農村と漁村の代表として,田主丸と牛深の2コホートが参加した。

田主丸,牛深
田主丸のコホートは筑後川沿いの地域に住む人が対象 牛深漁港からみるハイヤ大橋

 Seven Countries Studyの大きな特徴のひとつとして,栄養疫学のさきがけともなった詳細な食事調査があげられる。食事調査で主に用いられたのはduplicate meal method。日本語では「陰膳法」という趣のある名称がつけられている。

 25年間の追跡の結果,総コレステロールは冠動脈疾患と有意に関連すること,コレステロールが低い日本ではギリシャとならんで冠動脈疾患がもっとも少ないことが明らかになった。その他にも,飽和脂肪酸摂取と冠動脈疾患死,喫煙と死亡リスク,血圧と脳卒中の関連など多くの結果がもたらされた。

 Seven Countries Studyとしては25年目で追跡を終了している。しかしフィンランド,イタリア,オランダではFINE Studyが,日本では田主丸研究が続けられており,先達の志は世界各地でいまも受け継がれている。

福本先生,木村先生,ブラックバーン先生
左から,牛深で開業していた福本先生,日本の研究統括医だった木村先生,ミネソタ大学のブラックバーン先生(1970年)。背景は牛深港(福本病院所蔵)。


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