危険因子という概念を生み出し世界の臨床に大きな影響
場所 米国東部
アメリカ合衆国マサチューセッツ州ミドルセックス郡フラミンガム町
人口:65598人(2005年)
フラミンガム地図
開始年 1948年
対象 オリジナルコホート(1948年)5209人,オフスプリングコホート(1971年)5124人。第三世代コホート(2005年)4095人
検査項目
  • (オリジナルコホート1998年時)身体測定,血圧,尿検査,生活習慣,病歴聴取, MD検査,生化学検査,心電図,X線撮影,肺機能検査,身体機能,認知機能,心理社会的状態
  • (オフスプリングコホート)身体測定,血圧,尿検査,生活習慣,病歴聴取, MD検査,生化学検査,心エコー,頸動脈エコー,心電図,ホルター心電図,肺機能検査,身体機能,認知機能,心理社会的状態
フラミンガム心臓研究サイト:
http://www.framinghamheartstudy.org/new window open

フラミンガム町公式サイト:
http://www.framinghamma.org/new window open

50周年記念NIHサイト:
http://www.nhlbi.nih.gov/about/framingham/new window open
 研究参加者がイタリアにいったときのこと。「私がフラミンガム研究の参加者だというとケーブルカーに乗り合わせていた医師が驚いて感激されました」。

 1948年,米国東部ボストン市にほど近いフラミンガムでスタートしたフラミンガム心臓研究は,その後の循環器疾患研究に多大な影響を与え続けてきた。開始当時,米国の死因の80%が循環器疾患によって占められており,フラミンガム心臓研究では,感染症研究の手法であった「疫学」を,はじめて循環器疾患にとりいれて冠動脈疾患の原因を追及し,その後の30年間で米国の心血管疾患発症率を半減させることに成功した。

 この研究は大きく3つのコホートに分けられている。1948年の開始当初の集団であるオリジナルコホート,オリジナルコホートの配偶者および子を登録し1971年に開始したオフスプリングコホート,さらにその子である第三世代コホートである。

 冠動脈疾患の原因,すなわち「危険因子(リスクファクター)」という用語を最初に用いたのがこのフラミンガム心臓研究である。この研究から喫煙,年齢,高コレステロール,高齢,高血圧などの危険因子が同定されてきた。また,統計手法の開発も行われ,後に続く疫学研究に影響を与え続けている。

 フラミンガム心臓研究は開始当初に11の仮説を設けており,そのほとんどが証明されていることも驚くに値しよう(Thomas R Dawber. The Framingham Study: The Epidemiology of the Atherosclerotic Disease. Harvard University Press)。
  • 冠動脈疾患は加齢とともに増加する。男性でより早く発症し頻度も高い。
  • 高血圧例では正常血圧例よりも冠動脈疾患の発症率が高い。
  • 血清コレステロール値の上昇は冠動脈疾患増加と関連する。
  • 喫煙は冠動脈疾患発症増加と関係する。
  • 習慣的な飲酒は冠動脈疾患増加と関連する。
  • 身体活動が多ければ冠動脈疾患の進展は少ない。
  • 甲状腺機能亢進は冠動脈疾患発症を低下させる。
  • ヘモグロビン高値あるいはヘマトクリット高値は冠動脈疾患発症の増加率と関連がある。
  • 体重増加は冠動脈疾患の素因となる。
  • 糖尿病例では冠動脈疾患発症率が上昇する。
  • 痛風例では冠動脈疾患発症率が高い。
現在もなお健康に寄与するデータを提出し続けているフラミンガム心臓研究。冒頭の参加者はこのようにも述べている。「3世代にわたって続いていることは嬉しいですし,4世代目までも続くことを祈っています」。


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