アジア・太平洋地域の大規模な国際メタ解析研究
場所 アジア・太平洋地域の9つの国と地域
(中国,香港,台湾,日本,韓国,タイ,シンガポール,オーストラリア,ニュージーランド)
APCSC地図
対象 45の前向きコホート研究の参加者

研究組み入れ基準は以下のとおり。
  • アジア・太平洋地域に住む人を対象とした前向きコホート研究
  • 5000人・年以上の追跡期間(予定も含む)
  • 生年月日(または年齢),性別,ベースライン時の血圧値,追跡期間中の死亡年月日または死亡時年齢のデータがある
登録数 65万人以上
開始年 1999年
参考 http://www.apcsc.net/openwin
「循環器疾患コホート研究の手引き」140-147,メジカルビュー(2004).
Int J Epidemiol. 2006; 35: 1412-6. pubmed
J Hypertens. 2003; 21: 707-16.pubmed
Eur J Cardiovasc Prev Rehabil. 2005; 12: 484-91.pubmed
動脈硬化予防. 2012; 11: 13-9.
 Asia Pacific Cohort Studies Collaboration(APCSC)は,アジア・太平洋地域における計45の前向きコホート研究の65万人以上の個人データに基づく,大規模な国際メタ解析研究。性別・年齢・地域ごとに以下の検討を行うことをおもな目的として,1999年に開始された。
  • 心血管疾患の危険因子
  • 複数の心血管危険因子間の相互作用
  • 主要な心血管危険因子の保有率と疾患や死亡への寄与度
  • 癌発症率と心血管危険因子との関連
 過去数十年のあいだに,アジア・太平洋諸国は産業・経済・政治・社会面での劇的な変化を経験した。これらの変化は人々の健康にも影響を与えていると考えられ,実際にこの地域における非感染性疾患の増加が報告されている。また,世界の心血管疾患の約半分はアジア・太平洋地域で起きており,今後さらに増加するとの推算もある。こうした疾病負荷の軽減に向け,数々のコホート研究によって血圧や血清脂質,喫煙など多くの危険因子が明らかにされてきたが,規模や追跡期間が十分ではないものも多く,層別化解析や危険因子のカットオフ値などの詳細な検討は難しかった。また,疾病構造や危険因子の保有状況は東西で大きく異なっている。たとえばアジアでは,欧米よりコレステロールの値が低く,冠動脈疾患が少ない一方で,脳卒中(とくに出血性脳卒中)が多く,欧米とは異なる治療・予防対策が必要となる可能性がある。そこで,血圧や血清脂質をはじめとした主要な危険因子と心血管疾患発症リスクとの関連について,性別・年齢・地域ごとの詳細な検討を行うために開始されたのがAPCSCである。

 最大の特徴は,非常に大規模な個人データに基づく統合解析を行っていることで,研究単位での一般的なメタ解析よりも柔軟な解析が可能である。ただし,既存のコホート研究の結果を用いるデザインのため,データ収集の方法が標準化されていない,各コホート間で追跡年数や年齢層が異なっているなどの限界もある。

 これまでに,アジアでも心血管疾患の主要な危険因子は欧米と同様であること,その一方で,とくに血圧が重要な危険因子となることや(抄録へ),患者数の少ない孤立性拡張期高血圧に関する検討など(抄録へ),研究の特色を生かした数々の成果が報告されており,今後も実用的で信頼性の高いエビデンスが期待される。

 日本からは,愛東町研究(滋賀県),赤羽研究(愛知県田原市),公務員研究(愛知県名古屋市),久山町研究(福岡県),甲南保健・栄養研究(滋賀県甲賀市),美山コホート研究(和歌山県),大迫研究(岩手県),埼玉コホート研究(埼玉県),新発田研究(新潟県),信楽町研究(滋賀県),白川研究(岐阜県),端野・壮瞥町研究(北海道)の12研究が参加している。

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