[2005年文献] 持続性高血圧例および仮面高血圧例では,心血管疾患死と脳卒中発症のリスクが有意に高かった
日本人一般住民を対象に,白衣高血圧および仮面高血圧と心血管疾患死亡リスク,および脳卒中発症リスクとの関連を検討したはじめての研究である。前向きコホート研究における10.2年間の追跡の結果,仮面高血圧群および持続性高血圧群の心血管疾患死亡リスクおよび脳卒中発症リスクは,持続性正常血圧群にくらべて有意に高かったが,白衣高血圧群では差はみられなかった。これらの結果より,自由行動下血圧測定による仮面高血圧例の同定によって,心血管疾患死亡リスクの高い人を把握する必要性が示された。
Ohkubo T, et al: Prognosis of "masked" hypertension and "white-coat" hypertension detected by 24-h ambulatory blood pressure monitoring 10-year follow-up from the Ohasama study. J Am Coll Cardiol 2005; 46: 508-15.
- コホート
- 40歳以上の2716例のうち,町外で就労しており平日の自由行動下血圧測定が困難だった575例,入院中の121例,認知症または寝たきりの31例,随時血圧を得られなかった210例および参加への同意が得られなかった447例を除いた1332例を平均10.2年間追跡。
平均年齢は61.0歳で,男女比は4対6。
追跡開始時に降圧薬を服用していたのは405例(30%)。
心血管疾患既往は75例(6%),糖尿病既往は232例(17%),高脂血症既往は217例(16%)。
対象を,以下の基準により持続性正常血圧群,白衣高血圧群,仮面高血圧群,持続性高血圧群の4群に分けて検討をおこなった。
・持続性正常血圧: 729例(55%), 随時血圧140/90mmHg未満かつ家庭血圧135/85mmHg未満
・白衣高血圧: 170例(13%), 随時血圧140/90mmHg以上かつ家庭血圧135/85mmHg未満
・仮面高血圧: 221例(17%), 随時血圧140/90mmHg未満かつ家庭血圧135/85mmHg以上
・持続性高血圧: 202例(15%), 随時血圧140/90mmHg以上かつ家庭血圧135/85mmHg以上 - 結 果
- 白衣高血圧群の随時血圧(152/82 mmHg)は,仮面高血圧群(127/73 mmHg)よりも有意に高かった。
白衣高血圧群の自由行動下血圧(120/70 mmHg)は,仮面高血圧群(136/79 mmHg)よりも有意に低かった。
心血管疾患(CVD)イベントは152例で発症した(非致死的脳卒中 85例+心血管疾患死亡 67例の複合)。
CVDイベントの相対ハザードが有意に高かったのは,持続性高血圧群(2.26 vs. 持続性正常血圧群,P<0.0001),および仮面高血圧群(2.13,P=0.0006)。白衣高血圧群では有意差はなかった(1.28,P=0.4)。
心血管疾患死亡,および脳卒中発症においても同様の傾向が見られた。
以上より,自由行動下血圧を用いた仮面高血圧例の同定によって,心血管疾患死亡リスクのある患者を把握する必要性が示された。