[2005年文献] 白衣高血圧は家庭高血圧の有意な予測因子
「白衣高血圧は正常血圧から家庭血圧高値への移行の途中段階である」という仮説を検討するため,日本人一般住民における8.2年間の追跡研究を行った。その結果,白衣高血圧は家庭高血圧の有意な予測因子であり,心血管予後の悪化につながる可能性が示された。
Ugajin T, et al. White-coat hypertension as a risk factor for the development of home hypertension: the Ohasama study. Arch Intern Med. 2005; 165: 1541-6.
- コホート
- 40歳以上の2716人のうち,町外で就労のため平日の自由行動下血圧測定が困難だった575人,入院中の121人,認知症または寝たきりの31人,同意が得られなかった32人を除いた1957人を対象とした。
このうち,ベースライン時に家庭血圧測定(週3日以上×4週間)を行った1913人から,随時血圧値が得られなかった124人,降圧薬を服用していた582人,および追跡開始時点ですでに家庭高血圧を呈していた235人を除いた912人を平均8.2年間追跡し,777人について継続的な血圧値を得た。
平均年齢は56.0歳,男性の割合は34.0 %。
追跡調査における家庭血圧の平均測定回数は23.7回。 - 結 果
- ベースライン時の持続性正常血圧は649人(83.5 %),白衣高血圧は128人(16.5 %)。
白衣高血圧群で正常群に比べ有意に高い値を示したのは,随時血圧,家庭血圧,男性の割合。
家庭血圧135 / 85 mmHg以上への上昇,もしくは降圧薬服用開始を「家庭高血圧」と定義した。
追跡期間中に家庭高血圧を発症したのは,白衣高血圧群で46.9 %(60人)と,正常群(22.2 %)より有意に高い発症率を示した(P<0.001)。
白衣高血圧群の家庭高血圧発症オッズ比は,正常群よりも有意に高かった(2.86,P<0.001)。
正常群,白衣高血圧群ともに,ベースライン時の家庭血圧が高いほど,家庭高血圧の発症率が高くなった(P<0.001)。
同じ血圧レベルでは,正常群よりも白衣高血圧群のほうが家庭高血圧の発症率が高くなった。
ベースライン時の収縮期血圧が108mmHg以下もしくは拡張期血圧が52mmHg以下の人の家庭高血圧発症率は5 %以下であった。
年齢,性別(男性)および肥満も,家庭高血圧の有意な予測因子であった。
上記の予測因子,収縮期血圧および拡張期血圧を調整して解析した結果,ベースライン時の高い家庭血圧および白衣高血圧は,それぞれ有意かつ独立に家庭高血圧発症と相関した。
◇ 結論
「白衣高血圧は正常血圧から家庭血圧高値への移行の途中段階である」という仮説を検討するため,日本人一般住民における8.2年間の追跡研究を行った。その結果,白衣高血圧は家庭高血圧の有意な予測因子であり,心血管予後の悪化につながる可能性が示された。