[1997年文献] 家庭血圧の脳卒中発症リスク予測能は,随時血圧よりも優れる

40歳以上の日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,家庭血圧値と脳卒中発症リスクとの関連を検討した。4.4年間の追跡の結果,家庭血圧値が高い人では,低い人にくらべて脳卒中発症リスクが有意に高かった。随時血圧測定による拡張期血圧値が高い人では,低い人にくらべて脳卒中発症リスクが有意に高かったが,収縮期血圧値については有意な関連はみられなかった。以上より,家庭血圧の脳卒中発症リスク予測能は,随時血圧よりも優れていることが示唆された。

Sakuma M, et al: Predictive value of home blood pressure measurement in relation to stroke morbidity: a population-based pilot study in Ohasama, Japan. Hypertens Res 1997; 20: 167-74.pubmed

コホート
40歳以上の2716例のうち,町外で就労しており平日の自由行動下血圧測定が困難だった575例,入院中の121例,認知症または寝たきりの31例,同意が得られなかった32例を除いた1957例について4週間の家庭血圧測定を行い,3回以上の測定値が得られなかった168例,降圧薬服用中か,脳卒中既往または心房細動既往のある計533例を除いた1256例を平均4.4年間追跡した。
男性は507例(平均年齢59.1歳),女性は749例(58.3歳)。
収縮期血圧(SBP),拡張期血圧(DBP)のそれぞれについて,以下のように全体を五分位に分けて解析を行った。
   家庭SBP: 109 mmHg以下,110-116 mmHg,117-123 mmHg,124-132 mmHg,133 mmHg以上
   家庭DBP: 65 mmHg以下,66-70 mmHg,71-74 mmHg,75-80 mmHg,81 mmHg以上
   随時SBP: 114 mmHg以下,115-125 mmHg,126-132 mmHg,133-143 mmHg,144 mmHg以上
   随時DBP: 64 mmHg以下,65-70 mmHg,71-76 mmHg,77-83 mmHg,84 mmHg以上
結 果
随時血圧の平均(130.7 / 74.8 mmHg)は,家庭血圧の平均(121.9 / 73.5 mmHg)よりも有意に高かった(P<0.001)。

脳卒中の初発は39例で,うち30例(76.9%)がCTまたはMRIによる確定診断。病型の内訳は,脳梗塞23例,脳出血9例,くも膜下出血6例,病型不明1例。

脳卒中の発症リスクがもっとも低かったのは,家庭DBPの第2五分位(66-70 mmHg)。
家庭血圧のSBPおよびDBPがもっとも高い五分位(133 mmHg以上,81 mmHg以上)では,脳卒中の発症リスクが有意に増加した(vs. 117-123 mmHg,66-70 mmHg)。
また,家庭DBPがもっとも低い五分位(65 mmHg以下)でも脳卒中の発症リスクが上昇したものの,有意ではなかった。

随時DBPがもっとも高い五分位(84 mmHg以上)では,もっとも低い五分位(64 mmHg以下)に対して脳卒中発症リスクの有意な増加が見られたが,随時SBPでは有意なリスク上昇はみられなかった。

以上のように,家庭血圧の脳卒中発症リスク予測能は,随時血圧よりも優れているといえる。


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