[1997年文献] 24時間自由行動下血圧は,心血管疾患死亡リスクの予後予測能に優れる
Ohkubo T, et al: Prediction of mortality by ambulatory blood pressure monitoring versus screening blood pressure measurements: a pilot study in Ohasama. J Hypertens 1997; 15: 357-64.
- コホート
- 40歳以上の2716例のうち,町外で就労しており平日の自由行動下血圧測定が困難だった575例,入院中の121例,認知症または寝たきりの31例,参加を拒否した447例を除いた1542例(1987年から平均5.1年間追跡)。
平均年齢は男性62.5歳,女性61.2歳。
24時間自由行動下血圧(ABP),随時血圧それぞれの収縮期血圧と拡張期血圧で五分位に分けて解析を行った。
24時間ABPの収縮期血圧: 111 mmHg以下,112-118 mmHg,119-124 mmHg,125-133 mmHg,134 mmHg以上
随時収縮期血圧: 115 mmHg以下,116-125 mmHg,126-133 mmHg,134-144 mmHg,145 mmHg以上
24時間ABPの拡張期血圧: 64 mmHg以下,65-69 mmHg,70-72 mmHg,73-77 mmHg,78 mmHg以上
随時拡張期血圧: 64 mmHg以下,65-70 mmHg,71-75 mmHg,76-82 mmHg,83 mmHg以上 - 結 果
- 測定法による平均血圧は以下のとおり。
24時間ABP: 123.3 mmHg / 72.0 mmHg
昼間ABP: 128.9 mmHg / 76.1 mmHg
夜間ABP: 112.4 mmHg / 64.0 mmHg
随時血圧: 131.2 mmHg / 74.1 mmHg
昼間ABPは,夜間ABPよりも有意に高かった。
死亡リスクをみると,24時間ABPの収縮期血圧がもっとも高い五分位(134 mmHg以上)では全死亡および心血管疾患死亡リスク,また24時間ABPの拡張期血圧がもっとも高い五分位では心血管疾患死亡リスクが有意に増加した(vs. 112-118 mmHg,P<0.05)。
一方,随時収縮期血圧がもっとも高い五分位(145 mmHg以上)では全死亡リスクが有意に増加したものの,他の五分位でこれと一致した変化は見られなかった。
随時拡張期血圧では,死亡リスクとの有意な関連は見られなかった。
昼間ABPと夜間ABPでも検討を行ったところ,昼間の収縮期血圧と拡張期血圧,および夜間の拡張期血圧で,心血管疾患死亡リスクとの有意な関連が見られた。
この論文は,24時間自由行動下で測定した血圧が,随時血圧よりも予後予測能に優れていることを示した最初の論文である。
死亡リスクの有意な上昇がみられた測定法全死亡 心血管疾患死 非心血管疾患死 24時間ABP SBP 高 2.36 高 4.61 - DBP - 高 3.39 - 随時 SBP 高 2.25 - - DBP - - - 昼間ABP SBP 高 1.99,低1.85 高 9.06,低 7.17 - DBP - 高 4.64 - 夜間ABP SBP 高 3.16 - 高 4.36,低 4.82 DBP - 高 3.95 - 数字は,もっとも高い,もしくは低い五分位における有意な相対ハザード(vs. 第3五分位,P<0.05)。SBP: 収縮期血圧,DBP: 拡張期血圧。