[2006年文献] 上腕-足首脈波伝播速度(baPWV)および平均動脈圧は,それぞれ左室肥大の有意な予測因子
上腕-足首脈波伝播速度(baPWV)と左室肥大(LVH)との関連について,日本人一般住民における断面解析により検討した。その結果,baPWVにより示される動脈硬化は心電図上のLVHと有意かつ独立に関連していることが示された。大動脈の動脈硬化が,血圧とは独立してLVHの発症に寄与している可能性が示唆される。
Watabe D, et al. Electrocardiographic left ventricular hypertrophy and arterial stiffness: the Ohasama study. Am J Hypertens. 2006; 19: 1199-205.
- コホート
- 1988年に健診に参加し,上腕-足首脈波伝播速度(baPWV)測定,心電図測定,身体検査および生化学検査を完了した808人から,動脈閉塞性疾患疑い(足関節上腕血圧比[ABI]0.9未満など)の10人を除いた798人(男性267人,女性531人)(断面解析)。
平均年齢は62.6歳。
降圧薬を服用していたのは164人(20.6 %)だった。 - 結 果
- 心電図による診断で左室肥大(LVH: left ventricular hypertrophy)が見られたのは168人,見られなかったのは630人。
これにより,全体をLVH群および非LVH群に分けて解析を行った。
LVH群で非LVH群よりも有意に高い値を示したのは,収縮期血圧,平均動脈圧,脈圧,上腕-足首脈波伝播速度(baPWV),降圧薬服用率。
非LVH群におけるbaPWVは,年齢,平均動脈圧および心拍数と,それぞれ独立かつ有意に相関していた(P<0.001)。
そこで,この3因子から得られる理論的baPWVと実測baPWVの差を「PWV index」としたところ,LVH群のPWV index(0.56)は,非LVH群(0.00)よりも有意に高かった(P=0.025)。
なお,計算式は以下のとおり。
理論的baPWV = 年齢×0.20 + 0.13×平均動脈圧 + 心拍数×0.05 - 11.74
PWV指標 = 実測baPWV - 理論的baPWV
多変量ロジスティック回帰によると,LVHと有意かつ独立に相関していたのは,平均動脈圧,baPWV,降圧薬服用,糖尿病治療薬服用であり,baPWVが4.3 m/秒増加すると,LVHのリスクが26 %増加することが示された。
◇ 結論
上腕-足首脈波伝播速度(baPWV)と左室肥大(LVH)との関連について,日本人一般住民における断面解析により検討した。その結果,baPWVにより示される動脈硬化は心電図上のLVHと有意かつ独立に関連していることが示された。大動脈の動脈硬化が,血圧とは独立してLVHの発症に寄与している可能性が示唆される。