[2007年文献] 内膜-中膜肥厚(IMT)は高血圧,仮面高血圧で白衣高血圧よりも有意に大きかった
55歳以上の日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究における断面解析により,頸動脈硬化の度合いを,白衣高血圧,仮面高血圧,持続性高血圧,および持続性正常血圧での4つのあいだで比較検討した。その結果,持続性高血圧群および仮面高血圧群における頸動脈の内膜-中膜肥厚度(IMT)は,ともに持続性正常血圧群および白衣高血圧群にくらべて有意に大きかった。プラークの存在リスクについてもIMTと同様の傾向がみられた。以上より,頸動脈硬化の高リスク例を識別するためには,随時血圧は不十分であり,家庭血圧で予測するべきであることが示唆された。
Hara A, et al. Detection of carotid atherosclerosis in individuals with masked hypertension and white-coat hypertension by self-measured blood pressure at home: the Ohasama study. J Hypertens. 2007; 25: 321-7.
- コホート
- 1998年時点で55歳以上の3077例のうち,入院中,寝たきり,または精神疾患既往のある185例,町外で就労しており自由行動下血圧の測定が困難だった492例,研究への同意が得られなかったか,ベースライン時データが不十分だった1588例を除いた812例。
平均年齢は66.4歳。
全体を正常血圧群,白衣高血圧群,仮面高血圧群,持続性高血圧群の4群に分けて解析をおこなった。分類の基準,および各群に含まれる数は以下のとおり。
・持続性正常血圧: 283例(35%),随時血圧140/90mmHg未満かつ家庭血圧135/85mmHg未満
・白衣高血圧: 262例(32%),随時血圧140/90mmHg以上かつ家庭血圧135/85mmHg未満
・仮面高血圧: 54例(7%),随時血圧140/90mmHg未満かつ家庭血圧135/85mmHg以上
・持続性高血圧 213例(26%),随時血圧140/90mmHg以上かつ家庭血圧135/85mmHg以上 - 結 果
- 白衣高血圧群の背景は持続性正常血圧と,仮面高血圧例の背景は持続性高血圧と,それぞれ類似していた。
頸動脈の内膜-中膜肥厚度(intima media thickness: IMT)は,持続性高血圧群および仮面高血圧群において,白衣高血圧群,正常高血圧群よりも有意に大きかった(P<0.0001)。
プラークの存在リスクについてもIMTと同様の傾向が見られたものの,各群間の有意差はなかった。
これらの結果は,2回の計測値から求めた平均家庭血圧値および晩の家庭血圧値を用いても変わらなかった。また,降圧薬服用の有無による交互作用はみられなかった。
IMTと有意かつ独立に相関したのは,年齢,BMI高値,高い家庭収縮期血圧,脈圧。
プラークの存在と有意かつ独立に相関したのは,年齢,BMI低値,高い家庭収縮期血圧,糖尿病既往または心血管疾患既往,脈圧。
すなわち,アテローム性頸動脈硬化症の高リスク例を識別するためには随時血圧は不十分であり,家庭血圧で予測すべきであることが示された。