[2007年文献] 腎機能低下は脳卒中リスクおよび全死亡リスクと関連する
慢性腎臓病(CKD)は人種を問わず死亡・心血管疾患のリスクとなることが示唆されているが,欧米と疾病構造の異なる日本人での検討は少ない。そこで,CKDと脳卒中リスクとの関連について検討するために日本人一般住民における約8年間の追跡研究を行った。その結果,腎機能の低下は脳卒中発症リスクおよび全死亡リスクと関連していることが示された。
Nakayama M, et al. Kidney dysfunction as a risk factor for first symptomatic stroke events in a general Japanese population--the Ohasama study. Nephrol Dial Transplant. 2007; 22: 1910-5.
- コホート
- 1992~1997年の健診を受診した35歳以上の2192人のうち,血清クレアチニン,試験紙法によるスポット尿検査および交絡因子のデータに不備があった215人を除いた1977人を平均7.8年間追跡。
脳卒中既往者を除いた1914人を脳卒中既往なしとして解析した。
参加率64 %。追跡不能は37人(2 %)
◆ ベースライン時の対象背景
平均年齢62.9歳,男女比37:63,尿蛋白陽性7.8 %,血圧130 / 73 mmHg,喫煙率(禁煙者も含む)15.6 %,降圧薬治療22.5 %,心疾患既往5.1 %,糖尿病既往8.8 %,高脂血症37.7 %,BMI 23.4 kg/m2。 - 結 果
- 脳卒中(症候性)を発症したのは112人。
うち脳梗塞は78人,脳出血は21人,くも膜下出血は8人,一過性脳虚血発作(TIA)は4人,その他が1人だった。
死亡したのは187人。
うち悪性新生物による死亡が69人,心血管疾患(CVD)死亡が58人(うち脳卒中が26人),呼吸器疾患死亡が18人,その他の原因による死亡が42人だった。
◇ 腎機能低下とCVDリスク
クレアチニンクリアランス(Ccr)により,全体を以下のように3つのカテゴリーに分けて解析を行った。
70mL/分超: 555人
40~70 mL/分: 1246人
40 mL/分未満: 176人
Ccrのカテゴリーごとの死亡およびCVDリスクの相対ハザード(95 %信頼区間)は以下のとおりで,この結果はアルブミン尿の有無による調整を行っても同様だった。
・ 全死亡
70 mL/分超: 1.0 (対照),40~70 mL/分: 2.3 (1.29-4.23),40 mL/分未満: 5.3 (2.46-11.59)
・ CVD死亡
1.0,1.6 (0.55-4.50),2.7 (0.67-10.63)
・ 脳卒中発症
1.0,1.9 (1.06-3.75),3.1 (1.24-7.84)
◇ アルブミン尿とCVDリスク
アルブミン尿(試験紙法による判定で“+”以上)の有無による死亡およびCVDリスクの相対ハザード(95 %信頼区間)は以下のとおりで,この結果はCcrによる調整を行っても同様だった。
・ 全死亡
アルブミン尿なし: 1.0 (対照),アルブミン尿あり: 2.1 (1.44-3.13)
・ CVD死亡
1.0,2.8 (1.49-5.21)
・ 脳卒中発症
1.0,1.4 (0.80-2.41)
◇ 結論
慢性腎臓病(CKD)は人種を問わず死亡・心血管疾患のリスクとなることが示唆されているが,欧米と疾病構造の異なる日本人での検討は少ない。そこで,CKDと脳卒中リスクとの関連について検討するために日本人一般住民における約8年間の追跡研究を行った。その結果,腎機能の低下は脳卒中発症リスクおよび全死亡リスクと関連していることが示された。