[2008年文献] 果物と野菜の摂取量が多いほど高血圧リスクが低下する

果物と野菜の摂取が血圧値を下げ,高血圧リスクを低下させることがこれまでに報告されているが,アジア人を対象とした研究は少ない。そこで,日本人一般住民を対象に,野菜,果物の摂取量と家庭血圧測定の血圧値に関する断面解析研究を行った。その結果,果物,野菜,またその栄養素(カリウム,ビタミンC)の摂取量は,高血圧リスクの低下と有意に関連した。

Utsugi MT, et al. Fruit and vegetable consumption and the risk of hypertension determined by self measurement of blood pressure at home: the Ohasama study. Hypertens Res. 2008; 31: 1435-43.pubmed

コホート
1998年に35歳以上であった大迫住民4964人のうち,入院中・精神障害または寝たきりの人213人,町外で就労している人1410人を除いた3341人の中から,1931人(男性808人,女性1123人)の参加同意を得た。そのうち,家庭血圧測定3回以下の114人(58人,56名),質問票への回答に不備のある167人(81人,86人),極端なエネルギー摂取(全参加者のプラスマイナス2.5%の範囲)の81人(27人,54人)を除いた1569人(642人,927人)を解析対象とした(断面解析)。

家庭血圧測定条件は,起床1時間以内,朝食前,服薬前,座位少なくとも2分安静後とし,毎朝1回(1機会2回以上)測定を4週間実施した。
 
各測定機会1回目の測定値の平均を家庭血圧値とし(平均測定回数:22±6回),降圧薬服用もしくは家庭血圧値135/85 mmHg以上を「高血圧」とした。

果物と野菜,その栄養素(カリウム,ビタミンC,βカロチン)の摂取量については,食事摂取頻度調査票(FFQ:food-frequency questionnaire)を用い,14種の果物と19種の野菜それぞれの摂取頻度と摂取量をたずねた結果をもとに算出し(残差法を用いて総エネルギーで調整),「少ない」「中間」「多い」のカテゴリーにそれぞれ対象者を分類した。食事摂取の季節変動を考慮して,年4回,各3日間のFFQデータを用いた。
結 果
◇ 対象背景
果物の平均摂取量は108 g/日,野菜は63 g/日であった。平均家庭血圧は122/75 mmHg,平均BMIは男性23.2 kg/m2,女性23.4 kg/m2。降圧薬服用者は男性18.4%,女性18.8%,家庭高血圧は男性39.4%,女性29.3%であった。
ベースラインにおいて,果物の摂取量の「少ない」グループにくらべ,「多い」グループは女性が多く,喫煙率が低く,年齢が高く,BMI値が高く,アルコール摂取量が少なかった。野菜の摂取量についても同じ傾向がみられた。運動の頻度は果物・野菜ともに,摂取量ごとの差はなかった。野菜の摂取量が「少ない」グループにくらべ,「多い」グループにおいて降圧薬服用率が有意に高く,果物と野菜の摂取量が「多い」グループにくらべ,「少ない」グループにおいて未治療者の家庭血圧が有意に高かったが,高血圧の有病率は摂取量と関係しなかった。
 
◇ 果物および野菜の摂取量と高血圧リスク
果物の摂取量が「少ない」グループにくらべ,「多い」グループは,高血圧リスクが有意に低下し,生活習慣を組み入れて調整*した後も45%のリスク減少となった。また,野菜摂取量の「多い」グループと,その栄養素の「多い」グループも,高血圧リスクと有意な関連を示した。
野菜,果物,およびその栄養素の摂取量が「多い」グループの高血圧のオッズ比*は以下のとおり(vs.「少ない」)。
 果物 0.55(0.37-0.81),p=0.002
 野菜 0.62(0.40-0.95),p=0.029
 カリウム 0.54(0.32-0.88),p=0.015
 ビタミンC 0.57(0.37-0.87),p=0.010
(年齢,性別,BMI,運動の頻度,喫煙歴,アルコール,脂肪摂取量,塩分摂取量,糖尿病と高コレステロール血症で調整)

果物,野菜,その栄養素と,考えられる交絡因子間に相互作用はみとめられなかった。総エネルギー調整の代わりに塩分摂取量で調整しても,結果は同様であった。

◇ 結論
果物と野菜の摂取が血圧値を下げ,高血圧リスクを低下させることがこれまでに報告されているが,アジア人を対象とした研究は少ない。そこで,日本人一般住民を対象に,野菜,果物の摂取量と家庭血圧測定の血圧値に関する断面解析研究を行った。その結果,果物,野菜,またその栄養素(カリウム,ビタミンC)の摂取量は,高血圧リスクの低下と有意に関連した。


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