[2018年文献] 残存歯数10本未満の人では認知機能障害のリスクが高い
高齢の日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,歯牙喪失の状況と認知機能障害リスクとの関連を検討した。平均4.0年間の追跡の結果,残存歯数0~9本の人では,10本以上の人にくらべて認知機能障害のリスクが有意に高くなっており,「歯牙喪失は認知機能障害の予測因子である」という仮説が確認されたといえる。
Saito S, et al. Association between tooth loss and cognitive impairment in community-dwelling older Japanese adults: a 4-year prospective cohort study from the Ohasama study. BMC Oral Health. 2018; 18: 142.
- コホート
- 2005~2012年にベースライン健診を受診した65歳以上の448人のうち,健診データに不備のある40人,および認知機能障害がみられた82人を除外した326人を追跡。2009~2016年の追跡健診を受診した150人(追跡率46%)のうち,追跡健診データに不備のある10人を除いた140人を解析対象とした。
平均追跡期間は4.0年間。
残存歯数の中央値(10本)により,対象者を残存歯数0~9本,および10本以上の2つのカテゴリーに分けて解析を行った。
認知機能障害の定義は,Mini-Mental State Examination(MMSE,30点満点)のスコアが24点以下の場合とした。 - 結 果
- ◇ 対象背景
平均年齢70.9歳,男性30.7%,高血圧53.6%,糖尿病11.4%,脳心血管疾患既往12.9%,高脂血症60.7%,抑うつ症状10.7%,BMI 23.6 kg/m2,喫煙率7.1%,飲酒率39.3%,教育年数10年未満の割合73.6%,Mini-Mental State Examination(MMSE)スコア27.7点。
追跡健診時に認知機能障害がみられたのは27人(19.3%)であった。
認知機能障害がみられた人において,認知機能が正常だった人にくらべ,ベースライン時に有意に高値を示していたのは年齢(72.3 vs. 70.5歳,P=0.04),男性の割合(48.2% vs. 26.6%,P=0.03),および残存歯数0~9本の割合(70.4% vs. 46.0%,P=0.02)で,有意に低値を示していたのはMMSEスコア(26.4 vs. 28.0点,P<0.0001)。
◇ 歯牙喪失と認知機能障害リスク
多変量ロジスティック回帰分析において,残存歯数0~9本の人における4年後の認知機能障害リスクは,10本以上の人にくらべて有意に高かった(性・年齢調整オッズ比3.39,95%信頼区間1.29-8.88,P=0.013)。
この結果は,多変量調整†を行ったモデルでも同様であった(多変量調整オッズ比3.31,95%信頼区間1.07-10.2,P=0.037)(†年齢,性,高血圧,糖尿病,脳心血管疾患既往,高脂血症,抑うつ症状,BMI,喫煙,飲酒,教育年数およびベースラインのMMSEスコアで調整)。
多変量調整モデルで,そのほかに認知機能障害リスクとの有意な関連を示していたのは,年齢(多変量調整オッズ比1.14,95%信頼区間1.01-1.29,P=0.03),性別(男性)(4.60,1.25-16.7,P=0.02),およびベースラインのMMSEスコア(0.48,0.31-0.74,P=0.001)であった。
■ 結論
高齢の日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,歯牙喪失の状況と認知機能障害リスクとの関連を検討した。平均4.0年間の追跡の結果,残存歯数0~9本の人では,10本以上の人にくらべて認知機能障害のリスクが有意に高くなっており,「歯牙喪失は認知機能障害の予測因子である」という仮説が確認されたといえる。