[2006年文献] CKD(慢性腎臓病)は心血管死の独立した危険因子
日本全国から無作為に抽出した一般住民を対象としたコホート研究において,慢性腎臓病(CKD)と心血管疾患死亡リスクとの関連を検討した。10年間の追跡の結果,糸球体濾過量が低い(<30 mL/min/1.73 m2)と心血管疾患死亡リスクが有意に高くなっており,CKDが心血管疾患死亡の独立した危険因子であることが示唆された。
Nakamura K, et al.; The NIPPON DATA90 Research Group. Chronic kidney disease is a risk factor for cardiovascular death in a community-based population in Japan: NIPPON DATA90. Circ J. 2006; 70: 954-9.
- コホート
- NIPPON DATA90
1990年にベースライン調査(1990年循環器疾患基礎調査)を行ったものから,冠動脈疾患,脳卒中の既往例などを除外した7316人(男性3047人,女性4269人:平均年齢52.4歳)を2000年11月15日まで追跡。追跡期間は10年(70006人・年)。
死亡の同定は人口動態統計を使用した。 - 結 果
- ・10年間の死亡は655例,うち脳卒中死は74例(11.3%),心疾患死は101例(15.4%)。
・ベースライン時の糸球体濾過量(GFR)<60mL/分・1.73m2の慢性腎臓病例(CKD)は6.7%で,男性は146例(2.0%),女性は345例(4.7%)。
・GFRを6群(≧90,60≦GFR<90,45≦GFR<60,30≦GFR<45,15≦GFR<30,<15)に層別し,腎機能正常(GFR≧90)と比較した場合の心血管死リスクはそれぞれ1.09,1.15,1.23,5.52,9.12と逆相関を示した。
多変量調整後の非CKDと比較した場合のハザード比(MDRD推定式)は,心血管死1.20(95%信頼区間0.82-1.76),脳卒中死0.62(0.31-1.22),心疾患死1.65(1.01-2.72),全死亡1.31(1.06-1.60)であった。
Cockcroft-Gault式によると,それぞれ1.51(1.04-2.20),0.98(0.54-1.76),2.20(1.32-3.69),1.47(1.21-1.80)。
腎機能による対象背景(NIPPON DATA90)男性 女性 GFR≧60(2901人) GFR<60(146人) GFR≧60(3924人) GFR<60(345人) 平均年齢(歳) 52.2 67.3* 50.6 68.9* GFR(mL/分/1.73m2) 85.5 51.4* 87.3 52.5* クレアチニン(mg/dL) 0.90 1.48* 0.69 1.08* BMI(kg/m2) 23.1 21.5 22.8 23.5* 喫煙(%) 56.4 47.9* 9.1 7.2 飲酒(%) 59.7 42.5* 6.8 2.6* 高血圧(%) 48.2 71.9* 39.3 72.8* 糖尿病(%) 7.0 15.1* 3.7 8.1* 高脂血症(%) 16.4 24.7** 21.3 38.0* ECG上の高電位(%) 17.0 18.5 5.9 8.1 GFR: 糸球体濾過率,* p<0.01,** p=0.01