[2007年文献] 脳卒中死リスクは人口の少ない地域のほうが高い
全国の市町村を人口規模により分類し,脳卒中死亡率を比較した。その結果,脳卒中による死亡のリスクは人口の少ない地域のほうが高い傾向にあり,とくに女性では小規模自治体に住む人における有意なリスク上昇がみられることがわかった。
Nishi N, et al. Urban-rural difference in stroke mortality from a 19-year cohort study of the Japanese general population: NIPPON DATA80. Soc Sci Med. 2007; 65: 822-32.
- コホート
- NIPPON DATA80。
1980年の第3次循環器疾患基礎調査に登録され,無作為に抽出された日本各地の300地区に住む30歳以上の10546人のうち,冠動脈疾患または脳卒中既往のある280人,追跡不可能となった873人,ベースラインデータに不備があった84人を除いた9309人(男性4080人,女性5229人)を19年間追跡(1980~1999年)。
対象者の居住地区が属している市町村(計211)の人口規模により,以下のように分類を行った。
小規模: 人口3万人未満(自治体数67)
中規模: 人口3万人以上30万人未満(自治体数104)
大規模: 人口30万人以上(自治体数40) - 結 果
- ◇ ベースライン背景
・ 年齢: 男女とも,小規模自治体のほうが高かった(P<0.001)。
・ 高血圧: 男女とも,小規模自治体のほうが多かった(男性P=0.01,女性P<0.001)。
・ 総コレステロール: 男女とも,大規模自治体のほうが高かった(男性P<0.001,女性P=0.001)。
・ BMI: 男性では大規模自治体のほうが高く(P=0.001),女性では大規模自治体のほうが低かった(P=0.01)。
・ 喫煙率: 男性では,中規模自治体の喫煙率がもっとも高かった。女性では,大規模自治体のほうが高かった(P<0.001)。
・ 飲酒率: 男性では,自治体規模による違いはなかった。女性では,大規模自治体のほうが高かった(P<0.001)。
◇ 自治体規模と脳卒中による死亡リスク
全脳卒中死亡率(年齢調整)は,男性では大規模自治体のほうが高い傾向,女性では小規模自治体のほうが高い傾向がみられた。
自治体の規模,および男女を問わず,脳梗塞による死亡率は脳出血による死亡率よりも高かった。
マルチレベル回帰モデルを用いて,自治体の規模と脳卒中死亡リスクの関連を検討した。
その結果,女性では,小規模自治体における脳卒中死亡のオッズ比(多変量調整)が有意に高くなっていた(オッズ比1.68,95 %信頼区間1.02-2.77 vs. 大規模自治体)。男性でも同様の傾向がみられたが,有意差はみとめられなかった。
◇ 結論
全国の市町村を人口規模により分類し,脳卒中死亡率を比較した。その結果,脳卒中による死亡のリスクは人口の少ない地域のほうが高い傾向にあり,とくに女性では小規模自治体に住む人における有意なリスク上昇がみられることがわかった。