[2007年文献] 心房細動は脳卒中死亡リスクと強く関連
心房細動は死亡,とくに虚血性脳卒中の強い危険因子であることから,日本人一般住民を対象として,心房細動が脳卒中死亡,心血管疾患死亡,全死亡にどの程度寄与しているかを検討した。その結果,心房細動をもつ人では全死亡リスク,心血管疾患死亡リスク,脳卒中死亡リスクがいずれも有意に上昇しており,この結果はとくに64歳以下の年齢層において顕著であった。
Ohsawa M, et al. Mortality risk attributable to atrial fibrillation in middle-aged and elderly people in the Japanese general population: nineteen-year follow-up in NIPPON DATA80. Circ J. 2007; 71: 814-9.
- コホート
- NIPPON DATA80。
1980年の第3次循環器疾患基礎調査に登録され,無作為に抽出された日本各地の300地区に住む30歳以上の10546人のうち,追跡不能となった908人,脳卒中既往のある110人,心筋梗塞既往のある45人を除いた9483人(男性4154人,女性5329人)を19年間追跡(1980~1999年)。
心房細動の診断は心電図所見を用いて行われた。 - 結 果
- ◇ 対象背景
ベースライン時に心房細動を有していたのは全体の0.64 %(男性0.65 %,女性0.62 %)。
心房細動をもつ人(AF群)で,もたない人(非AF群)にくらべて有意(P<0.05)に高い値を示していたのは,年齢,収縮期血圧(女性のみ),高血圧の割合(女性のみ),左室肥大の割合,糖尿病の割合(女性のみ),心臓弁疾患の割合,喫煙率(男性のみ)。
◇ 心房細動と死亡リスク
死亡は1919人(AF群41人,非AF群1878人)。
AF群では,非AF群にくらべて全死亡リスク,心血管疾患死亡リスク,脳卒中死亡リスクがいずれも有意に増加していた。AF群における相対危険度(vs. 非AF群,多変量調整後)は以下のとおり。
全死亡: 1.88 (95 %信頼区間1.37-2.58)
心血管疾患死亡: 2.76 (1.81-4.20)
脳卒中死亡: 2.69 (1.42-5.10)
男女別の相対危険度(vs. 非AF群,多変量調整後)は以下のとおりで,女性ではAF群における有意なリスク増加がみとめられたが,男性では有意なリスク増加はみられなかった。
・ 男性
全死亡: 1.39 (95 %信頼区間0.82-2.35)
心血管疾患死亡: 1.38 (0.56-3.43)
脳卒中死亡: 1.27 (0.31-5.18)
・ 女性
全死亡: 2.28 (1.53-3.38)
心血管疾患死亡: 3.96 (2.46-6.37)
脳卒中死亡: 3.75 (1.80-7.82)
さらに年齢層ごとの解析を行った結果,以下のように,64歳以下におけるAF群の死亡リスクはすべての年齢を対象とした解析よりも高くなり,とくに脳卒中死亡について大きなリスク増加がみとめられた。
・ 64歳以下
全死亡: 4.00 (95 %信頼区間2.21-7.25)
心血管疾患死亡: 9.63 (4.30-21.6)
脳卒中死亡: 14.7 (4.59-47.2)
◇ 結論
心房細動は死亡,とくに虚血性脳卒中の強い危険因子であることから,日本人一般住民を対象として,心房細動が脳卒中死亡,心血管疾患死亡,全死亡にどの程度寄与しているかを検討した。その結果,心房細動をもつ人では全死亡リスク,心血管疾患死亡リスク,脳卒中死亡リスクがいずれも有意に上昇しており,この結果はとくに64歳以下の年齢層において顕著であった。