[2001年文献] 血中尿酸値は,全死亡,心血管疾患死亡,脳卒中死亡のいずれとも関連しない
日本全国から無作為に抽出した30歳以上の一般住民を対象としたコホート研究において,血中尿酸値と,心血管疾患(CVD)死亡,脳卒中死亡,および全死亡リスクとの関連を検討した。14年間の追跡の結果,日本人の大規模集団においてははじめて,血中尿酸値が全死亡,CVD死亡,脳卒中死亡のいずれのリスクとも関連しないことが示された。高尿酸血症は高血圧,インスリン抵抗性,高インスリン血症,脂質異常症などとの関連も指摘されていることから,CVDの予防という観点では,むしろこれらの疾患に着目することが重要と考えられる。
Sakata K, et al.; NIPPON DATA 80 Research Group. Absence of an association between serum uric acid and mortality from cardiovascular disease: NIPPON DATA 80, 1980-1994. National Integrated Projects for Prospective Observation of Non-communicable Diseases and its Trend in the Aged. Eur J Epidemiol. 2001; 17: 461-8.
- コホート
- NIPPON DATA80
無作為抽出された国内300地区に住み,1980年の第3次循環器疾患基礎調査に登録された30歳以上の10546人のうち,追跡不可となった908人,血中尿酸データが得られなかった138人,コレステロールなどの関連データが不十分だった6人,痛風,脳卒中,心疾患,腎疾患または糖尿病既往のある1322人を除いた8172人(男性3596人,女性4576人)を平均14年間追跡(1980~1994年)。追跡人年は108284人・年。 - 結 果
- 平均血中尿酸値は,男性で5.7 mg/dL,女性で4.3 mg/dL。
いずれの年齢層においても,男性の尿酸値は女性より高かった。また,女性では60代から80代にかけ,年齢とともに尿酸値が増加する傾向がみられたが,男性ではそのような傾向はなかった。
男性では降圧薬非服用者より服用者,喫煙者・禁煙者よりも喫煙未経験者,非飲酒者よりも飲酒者で,尿酸値が高い傾向が見られた。
女性では降圧薬非服用者より服用者,左室肥大既往のない人よりある人で,尿酸値が高い傾向が見られた。
線形回帰によると,尿酸と有意な関連がみられたベースライン時の値は,年齢(男性では逆相関,P=0.044),血糖(女性のみ),BMI,収縮期血圧,拡張期血圧,血中総コレステロール,血清クレアチニン(P<0.001)。
死亡は1327人で,うち男性が518人,女性が442人。
心血管疾患(CVD)死は男性179人(うち脳卒中死94人,冠動脈疾患死30人),女性180人(うち脳卒中死80人,冠動脈疾患死28人)。冠動脈疾患死については,症例数が少ないため解析を見合わせた。
ベースライン時の尿酸値により,性別ごとに全体を四分位に分けて解析を行ったところ,男性では尿酸値と全死亡リスクとの相関は見られなかった。女性では尿酸値と全死亡リスクとの有意な相関が見られたが,この有意性は年齢および種々の交絡因子の補正後に消失した。
また,尿酸値がもっとも高い四分位の女性(4.9 mg/dL以上)では,CVD死リスクおよび脳卒中死リスクの有意な上昇が見られたが,この有意性は年齢および種々の交絡因子の補正後に消失した。男性では,有意なリスク上昇は見られなかった。
尿酸値が1.7 mg/dL上昇したときのCVD死のハザード比は,男性で1.08,女性で0.92。
◇ 結論
日本全国から無作為に抽出した30歳以上の一般住民を対象としたコホート研究において,血中尿酸値と,心血管疾患(CVD)死亡,脳卒中死亡,および全死亡リスクとの関連を検討した。14年間の追跡の結果,日本人の大規模集団においてははじめて,血中尿酸値が全死亡,CVD死亡,脳卒中死亡のいずれのリスクとも関連しないことが示された。高尿酸血症は高血圧,インスリン抵抗性,高インスリン血症,脂質異常症などとの関連も指摘されていることから,CVDの予防という観点では,むしろこれらの疾患に着目することが重要と考えられる。