[2005年文献] 魚を食べる頻度は,全死亡,脳卒中死亡,冠動脈疾患死亡リスクとは関連しなかった
日本全国から無作為に抽出した30歳以上の一般住民を対象としたコホート研究において,魚の摂取頻度と,全死亡および死因別死亡リスクとの関連を検討した。19年間の追跡の結果,魚を食べる頻度と全死亡リスク,脳卒中死亡リスクおよび冠動脈疾患死亡リスクとのあいだには,有意な関連は見出されなかった。日本人の多くは,心血管疾患に対して望ましい効果があるとされる量よりもさらに多くの魚を食べており,このことが今回の結果に影響している可能性がある。
Nakamura Y, et al.; NIPPON DATA80 Research Group. Association between fish consumption and all-cause and cause-specific mortality in Japan: NIPPON DATA80, 1980-99. Am J Med. 2005; 118: 239-45.
- コホート
- NIPPON DATA80
無作為抽出された国内300地区に住み,1980年の第3次循環器疾患基礎調査に登録された30歳以上の10546人のうち,冠動脈疾患,脳卒中または癌の既往,腎不全などの合併症のある539人,ベースライン時のデータが不足していた258人,追跡不能となった870人を除いた8879人(男性3945人,女性4934人)を19年間追跡(1980~1999年)。
ベースライン時に身体計測,血圧測定などのほか,自己記入質問票によって,食事を含む生活習慣の調査が行われた。 - 結 果
- 魚を食べる頻度ごとに全体を以下の5つのカテゴリーに分けて解析を行った。
[1日2回以上] 569人,[1日1回] 2911人,[2日に1回] 2865人,[週に1~2回] 2269人,[ほとんど食べない] 265人
多変量コックス解析により,魚を食べる頻度と全死亡,脳梗塞死亡,脳出血死亡,冠動脈疾患死亡リスクとの関連を調べた結果,いずれの死亡でも有意な相対リスクの上昇はみられなかった。
年齢,性別,喫煙,飲酒,高血圧,BMI,糖尿病,血中総コレステロールにより補正を行ったコックス解析モデルにおいて,1日に2回以上魚を食べる人の各死亡の相対リスクは以下のようになった(vs. 週に1~2回)。
[全死亡] 0.99 (95%信頼区間0.77-1.27),[脳卒中] 1.26 (0.70-2.29),[脳梗塞] 1.09 (0.48-2.43),[脳出血] 0.92 (0.20-4.23),[冠動脈疾患] 0.91 (0.35-2.35)
◇ 結論
日本全国から無作為に抽出した30歳以上の一般住民を対象としたコホート研究において,魚の摂取頻度と,全死亡および死因別死亡リスクとの関連を検討した。19年間の追跡の結果,魚を食べる頻度と全死亡リスク,脳卒中死亡リスクおよび冠動脈疾患死亡リスクとのあいだには,有意な関連は見出されなかった。日本人の多くは,心血管疾患に対して望ましい効果があるとされる量よりもさらに多くの魚を食べており,このことが今回の結果に影響している可能性がある。