[2005年文献] わが国の心房細動の推定有病者数は,1980~2000年にかけて約39→73万人と顕著に増加

無作為に抽出された日本人一般住民を対象とした第3次~第5次循環器疾患基礎調査のデータを用いて,1980,1990,2000年の性・年齢層ごとの心房細動有病率,ならびにその推移を検討した。その結果,有病率は1980年0.7%,1990年0.7%,2000年0.9%とやや増加していたが,性・年齢層ごとの有病率には大きな変化はみられなかった。また,有病率は年齢とともに顕著に高くなっていた。以上の結果から推算されるわが国の成人の心房細動有病者数は,高齢化にともなって20年間で約39万人から約73万人へと大きく増加しており,今後も増加の一途をたどると考えられた。

Ohsawa M, et al. Rapid increase in estimated number of persons with atrial fibrillation in Japan: an analysis from national surveys on cardiovascular diseases in 1980, 1990 and 2000. J Epidemiol. 2005; 15: 194-6.pubmed

コホート
NIPPON DATA80(1980年),NIPPON DATA90(1990年)ならびに2000年の第5次循環器疾患基礎調査において,それぞれ無作為に抽出された日本各地の300地区に居住し,健診を受けた30歳以上の男女のうち,12誘導心電図のデータを有する人(1980年10376人[参加率75.0%],1990年8139人[74.3%],2000年5198人[62.2%])。

心房細動の有無は,調査時の12誘導心電図所見により診断した。
結 果
◇ 性・年齢層ごとの心房細動有病率
12誘導心電図に基づく心房細動の有病率は,1980年0.7%,1990年0.7%,2000年0.9%であった。
3回の調査における平均有病率を男女別にみると,男性(1.0%)のほうが女性(0.6%)よりも有意に高かった(P<0.001)。年齢層ごとにみると,70歳以上では男性(3.8%)のほうが女性(2.2%)よりも有意に高くなっていたものの(P=0.006),30,40,50,60歳代では有意な性差はみられなかった。

性・年齢層ごとの心房細動有病率の推移は以下のとおりで,いずれのサブグループでも大きな経時的変化はみられなかった。
男女とも,年齢が高くなるほど有病率も高くなっていた。

[男性]
 30~39歳: 1980年0.2%,1990年0.0%,2000年0.0%(P=0.46)
 40~49歳: 0.3%,0.2%,0.0%(P=0.55)
 50~59歳: 0.8%,0.8%,0.4%(P=0.70)
 60~69歳: 1.0%,1.6%,1.4%(P=0.64)
 70歳以上: 3.7%,4.3%,3.5%(P=0.82)

[女性]
 30~39歳: 0.0%,0.0%,0.0%
 40~49歳: 0.1%,0.0%,0.2%(P=0.40)
 50~59歳: 0.5%,0.1%,0.7%(P=0.13)
 60~69歳: 1.4%,0.7%,0.5%(P=0.09)
 70歳以上: 2.6%,1.9%,2.1%(P=0.67)

◇ 日本人における心房細動有病率の推算
得られた性・年齢層ごとの心房細動有病率を1980,1990,2000年の国勢調査データにあてはめるとともに,2010,2020,2030年の推計人口(中位推計値)を用いてわが国における成人の心房細動有病率を推算した結果は以下のとおりで(単位: 千人),性別を問わず,心房細動有病者は顕著に増加していくと考えられた。

[全体]1980年: 39.1万人,1990年: 53.4万人,2000年: 72.9万人,2010年: 99.5万人,2020年: 105.5万人,2030年: 108.1万人
[男性]22.8万人,30.6万人,41.6万人,52.2万人,59.8万人,60.3万人
[女性]16.3万人,22.9万人,31.3万人,47.3万人,45.7万人,47.7万人
人口構成推移予測に基づく推計値

◇ 結論
無作為に抽出された日本人一般住民を対象とした第3次~第5次循環器疾患基礎調査のデータを用いて,1980,1990,2000年の性・年齢層ごとの心房細動有病率,ならびにその推移を検討した。その結果,有病率は1980年0.7%,1990年0.7%,2000年0.9%とやや増加していたが,性・年齢層ごとの有病率には大きな変化はみられなかった。また,有病率は年齢とともに顕著に高くなっていた。以上の結果から推算されるわが国の成人の心房細動有病者数は,高齢化にともなって20年間で約39万人から約73万人へと大きく増加しており,今後も増加の一途をたどると考えられた。


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