[2005年文献] 血圧上昇は,BMIが低い人では脳出血死亡,高い人では脳梗塞死亡と相関する
日本全国から無作為に抽出した30歳以上の一般住民を対象としたコホート研究において,血圧とBMIの組み合わせと脳卒中および各病型による死亡リスクとの関連を検討した。17.3年間の追跡の結果,BMIが低い人では血圧上昇と脳出血死亡リスクがよく相関し,BMIが高い人では血圧上昇と脳梗塞死亡リスクがよく相関することがわかった。脳卒中予防の観点からは,BMIの高低にかかわらず血圧を適正にコントロールすることがのぞましいといえる。
Miyamatsu N, et al: Different effects of blood pressure on mortality from stroke subtypes depending on BMI levels: a 19-year cohort study in the Japanese general population--NIPPON DATA80.
- コホート
- NIPPON DATA80。
無作為抽出された国内300地区に住み,1980年の第3次循環器疾患基礎調査に登録された30歳以上の10546人のうち,追跡不可能となった908人,脳卒中既往のある110人,ベースライン時データが不足していた190人を除いた9338人(男性4081人,女性5257人)を,1999年11月まで平均17.3年間追跡(161315人・年)。
ベースライン時BMI値の三分位数により,全体を低BMI群(3116人),中BMI群(3111人),高BMI群(3111人)の3群に分けて解析を行った(第1三分位数: 21.2 kg/m2,第2三分位数: 23.8 kg/m2)。 - 結 果
- BMIがより高い群で有意に高い値を示した因子は,収縮期血圧(SBP),拡張期血圧(DBP),血中総コレステロール,血中アルブミン,血糖,高血圧の割合,降圧薬服用率,糖尿病既往の割合。
BMIがより高い群で有意に低い値を示した因子は,男性の割合,喫煙率。
脳卒中による死亡は311人。
うち176人が脳梗塞,68人が脳出血,67人がくも膜下出血または病型不明だった。
SBP 10 mmHg上昇,DBP 10 mmHg上昇は,それぞれ全脳卒中死,脳梗塞死および脳出血死のリスクと有意な相関を示した(年齢,性別,BMIなどで補正後)。
各死亡の相対リスクは以下のとおり(95%信頼区間)。
SBP +10 mmHg: 全脳卒中死 1.14(1.08-1.20),脳梗塞死 1.10(1.02-1.18),脳出血死 1.26(1.14-1.40)
DBP +10 mmHg: 全脳卒中死 1.29(1.17-1.42),脳梗塞死 1.15(1.01-1.31),脳出血死 1.66(1.37-2.01)
低BMI群,中BMI群,高BMI群のそれぞれについて,コックス比例ハザードモデルにより脳卒中の病型ごとに相対危険度を算出した結果,SBP 10 mmHg上昇が全脳卒中死および脳梗塞死の有意で独立した危険因子だったのは,中BMI群および高BMI群のみ。低BMI群では関連は見られなかった。この傾向はDBPでも同様であった。
一方,SBP 10 mmHg上昇が脳出血死の有意な危険因子だったのは,低BMI群および中BMI群のみ。高BMI群では関連は見られなかった。この傾向はDBPでも同様であった。
・ SBP 10 mmHg上昇の相対危険度 (***P<0.001,**P<0.01,*P<0.05)
低BMI群: 全脳卒中死 1.09,脳梗塞死 0.96,脳出血死 1.38***
中BMI群: 全脳卒中死 1.15**,脳梗塞死 1.19***,脳出血死 1.23*
高BMI群: 全脳卒中死 1.20***,脳梗塞死 1.21*,脳出血死 1.23
・ DBP 10 mmHg上昇の相対危険度 (***P<0.001,**P<0.01,*P<0.05)
低BMI群: 全脳卒中死 1.15,脳梗塞死 0.89,脳出血死 1.93***
中BMI群: 全脳卒中死 1.40***,脳梗塞死 1.36*,脳出血死 1.75***
高BMI群: 全脳卒中死 1.34**,脳梗塞死 1.30*,脳出血死 1.46
◇ 結論
日本全国から無作為に抽出した30歳以上の一般住民を対象としたコホート研究において,血圧とBMIの組み合わせと脳卒中および各病型による死亡リスクとの関連を検討した。17.3年間の追跡の結果,BMIが低い人では血圧上昇と脳出血死亡リスクがよく相関し,BMIが高い人では血圧上昇と脳梗塞死亡リスクがよく相関することがわかった。脳卒中予防の観点からは,BMIの高低にかかわらず血圧を適正にコントロールすることがのぞましいといえる。