[2004年文献] 中年世代の心拍数は,全死因死亡およびCVD死亡の独立した予測因子
日本全国から無作為に抽出した30歳以上の一般住民を対象としたコホート研究において,安静時心拍数が全死亡および心血管疾患死亡のリスクと関連するかを検討した。16.5年間の追跡の結果,中年世代の男女において,心拍数は全死亡および心血管疾患死亡の独立した予測因子であることが明らかになった。
Okamura T, et al.; NIPPONDATA80 Research Group. Resting heart rate and cause-specific death in a 16.5-year cohort study of the Japanese general population. Am Heart J. 2004; 147: 1024-32.
無作為抽出された国内300地区に住み,1980年の第3次循環器疾患基礎調査に登録された30歳以上の10546人のうち,脳卒中または冠動脈疾患既往(280人),ベースライン時のデータ不足(396人),追跡不可能(870人),上室性/心室性期外収縮,持続性心房細動/心房粗動などの不整脈(200人)を除いた8800人(145240人・年,男性3856人,女性4944人)を1998年11月15日まで平均16.5年間年追跡した。
ベースライン時の安静時心拍数(拍/分)四分位により,以下のように全体を4群に分けて解析を行った。
男性: 60未満,60~65,66~73,74以上
女性: 64未満,64~69,70~77,78以上
30~59歳,60歳以上の年齢層のそれぞれについて,心拍数と死因別死亡リスクの関連を分析した(相対危険度は,年齢,血清アルブミン,BMI,高血圧,高脂血症,糖尿病,喫煙,飲酒で補正した)。
30~59歳の男性では,心拍数がもっとも高い群において,全死因死亡リスク,CVD死亡リスク,および心疾患(冠動脈疾患+心不全)死亡リスクが有意に上昇した(vs. 心拍数がもっとも低い群)。相対危険度はそれぞれ,1.45(95 %信頼区間1.06-2.00,P=0.02),2.55(1.22-5.31,P=0.01),3.99(1.14-14.0,P=0.03)。
また,30~59歳の女性では,心拍数がもっとも高い群において,全死因死亡リスクおよび心疾患死亡リスクが有意に上昇した(vs. 心拍数がもっとも低い群)。相対危険度はそれぞれ,1.94(95 %信頼区間1.26-3.01,P=0.00),9.37(1.05-83.7,P=0.04)。心血管疾患死亡については,心拍数が2番目に高い群のリスク上昇が見られた(3.61,1.34-9.72,P=0.01,vs. もっとも低い群)。
60歳以上の年齢層では,男女とも心拍数と死因別死亡リスクとの関連は見られなかった。
これらの関連は,研究開始直後5年間の死亡を除外しても変わらなかった。
◇ 結論
日本全国から無作為に抽出した30歳以上の一般住民を対象としたコホート研究において,安静時心拍数が全死亡および心血管疾患死亡のリスクと関連するかを検討した。16.5年間の追跡の結果,中年世代の男女において,心拍数は全死亡および心血管疾患死亡の独立した予測因子であることが明らかになった。