[2010年文献] 中年期の喫煙は,その後の日常生活動作低下リスクと関連

中年期における喫煙が将来の日常生活動作(ADL)低下リスクを高めるかどうかについて,全国から無作為に抽出した一般住民を対象とした19年にわたる追跡研究における検討を行った。その結果,中年期における喫煙は,ADL低下リスク,およびADL低下+死亡の複合アウトカムのリスクを大きく高めることが示された。この結果から,心血管疾患や癌のみならず,将来の身体障害を予防するためにも,喫煙者に対して禁煙の重要性を強調するべきと考えられた。

Takashima N, et al.; NIPPON DATA80 Research Group. Cigarette smoking in middle age and a long-term risk of impaired activities of daily living: NIPPON DATA80. Nicotine Tob Res. 2010; 12: 944-9.pubmed

コホート
NIPPON DATA80。
1980年の第3次循環器疾患基礎調査に登録され,無作為に抽出された日本各地の300地区のうち249地区において,1999年に日常生活動作(activities of daily living: ADL)に関する追跡調査が行われた。この249地区に住む2724人(1980年当時47~59歳)のうち,ベースライン時に心血管疾患既往を有していた34人,ベースライン時の交絡因子のデータに不備のある44人,ADL調査の前に転居した83人,ADL調査の前に死亡した386人,ADL調査に参加しなかったかデータに不備のある287人を除いた1890人が解析の対象となった。
追跡期間は19年。

ベースライン時の喫煙状況により,全体を喫煙者(男性681人,女性94人),非喫煙者(男性340人,女性1161人)に分類した。
喫煙者については,喫煙量(1日20本超/以下)ごとの解析も行った。

ADLについては,自宅訪問による面接や電話などにより,5つの項目(食事,排泄,着替え,入浴,移動[室内での歩行])に関してそれぞれ「1人で行える」,「部分的に人の助けが必要」,「全面的に人の助けが必要」のいずれに該当するかをたずね,1つでも部分的または全面的な助けが必要な項目を有する場合に「ADL低下」とした。
結 果
◇ 対象背景
男性の喫煙者は,非喫煙者にくらべて総コレステロール値およびBMIが有意に低かった。
性別を問わず,喫煙者は非喫煙者より飲酒率が有意に高かった。

◇ 喫煙と日常生活動作(activities of daily living: ADL)低下リスク
1999年のADL調査時にADL低下がみとめられたのは,男性31人,女性44人。

男女を合わせた解析において,喫煙者のADL低下の多変量調整オッズ比は2.11(95%信頼区間1.09-4.06)と,非喫煙者に比して有意に高かった。
この結果は,性別ごとに解析を行っても同様であった(男性の多変量調整オッズ比2.23[0.91-5.42],女性2.25[0.81-6.24])。
男女を合わせて喫煙量ごとに検討を行うと,喫煙量が多いほどADL低下のリスクが有意に高くなっていた(1日20本超の喫煙者の多変量調整オッズ比2.35[0.94-5.88],1日20本以下2.04[1.02-4.06],P for trend=0.04)。

◇ 喫煙とADL低下および死亡リスク
男女を合わせた解析において,喫煙者のADL低下+死亡の複合アウトカムの多変量調整オッズ比は1.83(95%信頼区間1.37-2.41)と,非喫煙者に比して有意に高くなっていた。
この結果は,性別ごとに解析を行っても同様であった(男性の多変量調整オッズ比1.84[1.32-2.55],女性1.82[1.05-3.16])。
男女を合わせて喫煙量ごとに検討を行うと,喫煙量が多いほど,ADL低下+死亡の複合アウトカムのリスクが有意に高くなっていた(1日20本超の喫煙者の多変量調整オッズ比2.34[1.64-3.33],1日20本以下1.64[1.21-2.21],P for trend<0.001)。


◇ 結論
中年期における喫煙が将来の日常生活動作(ADL)低下リスクを高めるかどうかについて,全国から無作為に抽出した一般住民を対象とした19年にわたる追跡研究における検討を行った。その結果,中年期における喫煙は,ADL低下リスク,およびADL低下+死亡の複合アウトカムのリスクを大きく高めることが示された。この結果から,心血管疾患や癌のみならず,将来の身体障害を予防するためにも,喫煙者に対して禁煙の重要性を強調するべきと考えられた。


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