[2013年文献] 牛乳・乳製品の摂取量が多い女性は心血管疾患死亡リスクが低い

これまでに,おもに欧米の研究から,乳製品の摂取量が心血管疾患リスクと負の関連をもつことが報告されている。日本でも,栄養バランスの観点から,とくにカルシウムの摂取源として牛乳や乳製品の摂取が推奨されているが,欧米諸国にくらべると摂取量は少ない。そこで,日本人一般住民を対象とした追跡研究により,牛乳および乳製品の摂取量と心血管疾患死亡リスクとの関連について検討した。その結果,女性でのみ,牛乳および乳製品の摂取量と心血管疾患死亡リスクとのあいだに負の関連がみとめられた。

Kondo I, et al. Consumption of Dairy Products and Death From Cardiovascular Disease in the Japanese General Population: The NIPPON DATA80. J Epidemiol. 2013; 23: 47-54.pubmed

コホート
NIPPON DATA80。
1980年の第3次循環器疾患基礎調査に登録され,無作為に抽出された日本各地の300地区に住む30歳以上の10546人のうち,1日の総摂取エネルギーが500 kcal未満または5000 kcal以上の139人,追跡不可能となった909人,心血管疾患既往のある280人,データに不備のある48人を除いた9243人(男性4045人,女性5198人)を対象とし,同年(1980年)に実施された国民栄養調査の結果を用いた解析を行った。
追跡期間は24年間。

牛乳および乳製品の摂取量については,1980年の国民栄養調査において世帯単位で実施された秤量法食事記録(平均的な食事をとった連続3日間について実施)の結果をもとに,1995年の国民栄養調査での性別・年齢層ごとの平均摂取量データを用いて個人の摂取量を推算した。
以下のように,1日あたり牛乳および乳製品の摂取量によって,対象者を男女別に三分位のカテゴリーに分けた。
・男性
  少量摂取: 42.4 g以下,中程度摂取: 42.5~81.5 g,多量摂取: 81.6 g以上
・女性
  少量摂取: 53.6 g以下,中程度摂取: 53.7~105.6 g,多量摂取: 105.7 g以上
結 果
◇ 対象背景
牛乳および乳製品の摂取量の93%が,牛乳の摂取によるものであった。
牛乳および乳製品の摂取量のカテゴリー間で有意に異なっていたのは,年齢,収縮期血圧値,総コレステロール値,職種,総摂取エネルギー,野菜の摂取量,果物の摂取量,肉類および家禽類の摂取量,卵の摂取量,脂肪および油の摂取量,塩分の摂取量,糖尿病既往の割合(男性のみ),喫煙状況(男性のみ),BMI(女性のみ),拡張期血圧値(女性のみ),降圧薬服用率(女性のみ),飲酒習慣(女性のみ)。

◇ 牛乳および乳製品の摂取量と心血管疾患死亡
女性では,牛乳および乳製品の摂取量が少ないカテゴリーほど,心血管疾患死亡リスクが高いという有意な関連がみとめられた。男性では有意な関連はみられなかった。
冠動脈疾患死亡リスクについても,女性でのみ,摂取量の少ないカテゴリーほどリスクが高いという有意な関連がみとめられた。
脳卒中死亡リスクについては,男女とも牛乳および乳製品の摂取量との関連はみとめられなかった。

多変量調整モデル*における死亡のハザード比(95%信頼区間)は以下のとおり。
*年齢,BMI,喫煙状況,飲酒習慣,糖尿病既往,降圧薬服用,職種,総摂取エネルギーにより調整
・男性
  心血管疾患死亡: 多量摂取1(対照),中程度摂取0.90(0.71-1.15),少量摂取0.89(0.21-1.11)[P for trend=0.31]
  冠動脈疾患死亡: 1,0.57(0.32-1.01),0.67(0.41-1.11)[P for trend=0.11]
  脳卒中死亡: 1,1.09(0.77-1.54),1.10(0.80-1.50)[P for trend=0.58]

・女性
  心血管疾患死亡: 多量摂取1(対照),中程度摂取1.03(0.79-1.33),少量摂取1.27(0.99-1.58)[P for trend=0.045]
  冠動脈疾患死亡: 1,0.72(0.38-1.36),1.67(0.99-2.80)[P for trend=0.02]
  脳卒中死亡: 1,1.04(0.70-1.54),1.34(0.94-1.90)[P for trend=0.08]

牛乳および乳製品の摂取量を連続変数とした解析では,女性の心血管疾患死亡リスクについて,摂取量が1日あたり100 g多くなるごとにハザード比が0.86(0.74-0.99)と有意に低くなった。男性では有意な関連はみとめられなかった。


◇ 結論
これまでに,おもに欧米の研究から,乳製品の摂取量が心血管疾患リスクと負の関連をもつことが報告されている。日本でも,栄養バランスの観点から,とくにカルシウムの摂取源として牛乳や乳製品の摂取が推奨されているが,欧米諸国にくらべると摂取量は少ない。そこで,日本人一般住民を対象とした追跡研究により,牛乳および乳製品の摂取量と心血管疾患死亡リスクとの関連について検討した。その結果,女性でのみ,牛乳および乳製品の摂取量と心血管疾患死亡リスクとのあいだに負の関連がみとめられた。


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