[2013年文献] HbA1c値は全死亡,心血管疾患死亡,冠動脈疾患死亡リスクと関連
HbA1cと心血管疾患リスクとの関連について,アジア人で検討を行った研究は少なく,また,日本では長くHbA1cの表記にJDS値が用いられてきたために欧米との比較が難しかった。そこで,無作為に抽出された日本人一般住民を対象とした15年間の追跡研究によって,NGSP値を用いてHbA1cと全死亡ならびに心血管疾患死亡リスクとの関連を検討した。糖尿病治療を受けていない人において,HbA1c値は全死亡,心血管疾患死亡,冠動脈疾患死亡リスクとの有意な正の関連を示しており,欧米からの報告とも一致する結果となった。心血管疾患死亡リスクは,糖尿病の診断基準には満たないHbA1c値6.0~6.4%のカテゴリーにおいても有意に高くなっていた。以上の結果より,採血の時間を問わないHbA1c値は,健診などにおける糖代謝機能の評価に有用と考えられた。
Sakurai M, et al.; for the NIPPON DATA90 Research Group. HbA1c and the Risks for All-Cause and Cardiovascular Mortality in the General Japanese Population: NIPPON DATA90. Diabetes Care. 2013; 36: 3759-65.
- コホート
- NIPPON DATA90。
1990年の第4次循環器疾患基礎調査に登録され,無作為に抽出された日本各地の300地区の30歳以上の8383人(男性3503人,女性4880人)のうち,冠動脈疾患または脳卒中既往のある358人,ベースラインデータに不備のある649人,居住情報に不備のある256人を除いた7120人(男性2962人,女性4158人)を2005年11月まで15年間追跡(99605人・年)。
糖尿病治療を受けていた人は191人。
糖尿病治療を受けていない人を,HbA1c(NGSP値)により,以下の5つのカテゴリーに分けて解析を行った。
<5.0%(2143人),5.0~5.4%(3505人),5.5~5.9%(964人),6.0~6.4%(191人),≧6.5%(126人) - 結 果
- ◇ 対象背景
平均年齢は52.3歳,平均BMIは22.9 kg/m2,平均HbA1c値は5.3%。
HbA1c値が高いカテゴリーほど有意に高くなっていたのは年齢,BMI,血圧,総コレステロール値,喫煙率で,有意に低くなっていたのはHDL-C値。
◇ HbA1c値と全死亡・心血管疾患(CVD)死亡リスク
追跡期間中に死亡したのは1104人で,このうちCVD死亡は304人。
CVD死亡のうち,冠動脈疾患死亡は61人,脳卒中死亡は127人(うち脳梗塞死亡が78人,脳出血死亡が25人,未分類の脳卒中による死亡が24人)であった。
HbA1c値のカテゴリーとCVD死亡の多変量調整ハザード比(HR)は,連続的な正の関連を示した。HbA1c値が6.0~6.4%,および≧6.5%のカテゴリーでは,<5.0%に比した有意なリスク増加がみられた(それぞれHR 2.18[95%信頼区間1.22-3.87],HR 2.75[1.43-5.28])。また,糖尿病治療中の人においても,CVD死亡リスクは有意に増加していた(HR 2.04[1.19-3.50])。
HbA1c値が1%増加するごとに,心血管疾患死亡の多変量調整HRは1.32(95%信頼区間1.12-1.56)と有意に増加していた。全死亡(HR 1.20[1.09-1.32]),冠動脈疾患死亡(1.40[1.02-1.92]),脳梗塞死亡(1.38[0.98-1.92])についてもリスク増加傾向がみとめられた。
脳出血死亡については,HbA1値との関連はみられなかった。
以上の結果は,男女別の解析,ならびに貧血の人を除いた解析を行っても同様であった。性別による有意な相互作用はみとめられなかった。
◇ 結論
HbA1cと心血管疾患リスクとの関連について,アジア人で検討を行った研究は少なく,また,日本では長くHbA1cの表記にJDS値が用いられてきたために欧米との比較が難しかった。そこで,無作為に抽出された日本人一般住民を対象とした15年間の追跡研究によって,NGSP値を用いてHbA1cと全死亡ならびに心血管疾患死亡リスクとの関連を検討した。糖尿病治療を受けていない人において,HbA1c値は全死亡,心血管疾患死亡,冠動脈疾患死亡リスクとの有意な正の関連を示しており,欧米からの報告とも一致する結果となった。心血管疾患死亡リスクは,糖尿病の診断基準には満たないHbA1c値6.0~6.4%のカテゴリーにおいても有意に高くなっていた。以上の結果より,採血の時間を問わないHbA1c値は,健診などにおける糖代謝機能の評価に有用と考えられた。