[2013年文献] 心房期外収縮は心血管疾患死亡の独立した予測因子

心電図検査でよくみられる所見の一つである心房期外収縮は,通常良性とされているものの,頻度が高ければ心房細動に移行しやすいとの報告もある。そこで,日本人一般住民を対象とした14年間の追跡研究によって,心房期外収縮の長期的な予後を検討した。その結果,頻度自体は0.8%と低かったものの,心房期外収縮は全死亡および心血管疾患死亡リスクの独立した有意な予測因子であることが示された。この結果は,とくに高血圧者で顕著であった。

Inohara T, et al.; NIPPON DATA 80/90 Research Group. Long-Term Outcome of Healthy Participants with Atrial Premature Complex: A 15-Year Follow-Up of the NIPPON DATA 90 Cohort. PLoS One. 2013; 8: e80853.pubmed

コホート
NIPPON DATA90。
1990年の第4次循環器疾患基礎調査に登録され,無作為に抽出された日本各地の300地区の30歳以上の8383人のうち,心筋梗塞または脳卒中既往のある248人,心房細動または心房粗動所見のある54人,ベースライン健診のデータに不備のある120人,追跡に必要な住所が得られていない269人を除いた7692人(男性41.5%,平均年齢52.5歳)を平均14.0年間追跡した(10万7474人・年)。
結 果
◇ 対象背景
12誘導心電図で心房期外収縮(ミネソタコード8-1-1または8-1-3)がみられたのは64人(0.8%)。
心房期外収縮ありの人となしの人とで有意差がみられたおもな対象背景は以下のとおり。
  年齢: 心房期外収縮あり67.3歳,なし52.4歳(P<0.001)
  BMI: 22.0 kg/m2,22.9 kg/m2(P=0.022)
  収縮期血圧: 148 mmHg,135 mmHg(P<0.001)
  高血圧: 32.8%,21.1%(P=0.022)
  R波増高: 18.8%,10.5%(P=0.033)
  ST低下: 9.4%,2.4%(P=0.005)
  T波異常: 23.4%,7.9%(P<0.001)

◇ 心房期外収縮と全死亡および心血管疾患死亡リスク
追跡期間中に死亡したのは1211人で,内訳は以下のとおりであった。
  心血管疾患死亡338人
   脳卒中死亡138人
   冠動脈疾患死亡68人
   心不全死亡73人

Kaplan-Meier分析により心房期外収縮ありの人となしの人の予後を比較すると,心房期外収縮のある人の生存率は,ない人にくらべて有意に低くなっていた(P<0.001)。

Cox比例ハザード解析による,心房期外収縮ありの人の全死亡ならびに心血管疾患死亡の多変量調整ハザード比(vs. なし)は以下のとおり(年齢,性別,BMI,喫煙,飲酒,高脂血症,糖尿病,収縮期血圧,血清クレアチニン,心房期外収縮以外の心電図所見により調整)。
  全死亡: 1.55(95%信頼区間1.07-2.24),P=0.020
  心血管疾患死亡: 2.03(1.12-3.66),P=0.019

◇ 層別化解析
層別化解析を行ったところ,高血圧による有意な相互作用がみられた(P for interaction=0.03)。
高血圧者における心房期外収縮ありの人の全死亡ならびに心血管疾患死亡の多変量調整ハザード比(vs. なし)は以下のとおり。
  全死亡: 3.19(95%信頼区間1.87-5.45),P<0.001
  心血管疾患死亡: 4.66(2.09-10.4),P<0.001
   
年齢(65歳未満/以上),性別,BMI(24 kg/m2未満/以上),飲酒習慣(現在飲酒/禁酒または飲酒未経験)については,有意な相互作用はなし。


◇ 結論
心電図検査でよくみられる所見の一つである心房期外収縮は,通常良性とされているものの,頻度が高ければ心房細動に移行しやすいとの報告もある。そこで,日本人一般住民を対象とした14年間の追跡研究によって,心房期外収縮の長期的な予後を検討した。その結果,頻度自体は0.8%と低かったものの,心房期外収縮は全死亡および心血管疾患死亡リスクの独立した有意な予測因子であることが示された。この結果は,とくに高血圧者で顕著であった。


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