[2003年文献] 血中アディポネクチン低値は,2型糖尿病発症の危険因子
日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,血清アディポネクチン値と2型糖尿病発症リスクとの関連を検討した。5年間の追跡の結果,血清アディポネクチン値の減少は,2型糖尿病発症の有意かつ独立した危険因子であることが示された。
Daimon M, et al.; Funagata study. Decreased serum levels of adiponectin are a risk factor for the progression to type 2 diabetes in the Japanese Population: the Funagata study. Diabetes Care. 2003; 26: 2015-20.
- コホート
- 舟形町在住の36歳以上の4183人のうち,脳血管疾患既往がある,もしくは追跡困難となるような障害のある377人,糖尿病既往のある100人を除いた上で,参加への同意が得られた1792人(男性769人,女性1023人,平均年齢58.5歳)を1995~1997年に登録し,2000~2002年まで5年間の追跡を行った。
追跡率は54.6%(978人)。 - 結 果
- 糖尿病群および耐糖能異常(IGT)群の血中アディポネクチン値はそれぞれ正常群よりも有意に低く,TNF-α(Tumor Necrosis Factor α,腫瘍壊死因子)は有意に高かった。各群の平均値は以下のとおり(P値は正常群と比較した場合)。
血中アディポネクチン(10×log microgram/mL)
[正常] 9.06,[IGT] 8.60(P=0.064),[糖尿病] 8.01(P<0.001)
TNF-α(10×log pg/mL)
[正常] 11.4,[IGT] 11.8(P=0.006),[糖尿病] 11.8(P<0.001)
女性の血中アディポネクチンは男性よりも有意に高く(9.72 vs. 7.91 [10×log microgram/mL],P<0.001),TNF-αは有意に低かった(11.3 vs. 11.6 [10×log pg/mL],P<0.001)。
ベースライン時と5年後の耐糖能により,全体を以下の表に示す9つのカテゴリーに分けて解析を行った。
ベースライン時 5年後 正常 IGT 糖尿病 正常 709 110 18 IGT 27 47 36 糖尿病 5 5 21
ベースライン時から5年後の変化が[正常→糖尿病]である群では,[正常→正常]群に比べ,ベースライン時の血中アディポネクチンが有意に低く,男性の割合,ベースライン時の空腹時血糖,ヘモグロビンA1c,食後2時間血糖およびウエスト/ヒップ比が有意に高かった。
TNF-α,およびHOMA-IR(HOmeostasis Model Assessment of Insulin Resistance)をはじめとした脂質代謝異常に関する因子では,有意差はなかった。
一方,[IGT→糖尿病]群と[IGT→正常 / IGT]群に分けて解析を行った結果,糖尿病発症群と未発症群との間ではベースライン時の血中アディポネクチンの有意差はなかった。
多変量ロジスティック回帰分析により,各因子ごとの糖尿病発症([正常→糖尿病])のオッズ比を算出した。
その結果,糖尿病発症の有意かつ独立した危険因子は,食後2時間血糖の上昇,血中アディポネクチンの減少,性別(男性)であった。
年齢,ウエスト/ヒップ比,TNF-αは有意な危険因子ではなかった。
また,血中アディポネクチン値により全体を三分位に分けて解析を行ったところ,やはりアディポネクチン値がもっとも低い群では,もっとも高い群にくらべ,糖尿病発症リスクの有意な上昇が見られた。
◇ 結論
日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,血清アディポネクチン値と2型糖尿病発症リスクとの関連を検討した。5年間の追跡の結果,血清アディポネクチン値の減少は,2型糖尿病発症の有意かつ独立した危険因子であることが示された。