[2005年文献] 歩行は脳梗塞死亡,スポーツは冠動脈疾患死亡リスクを減少させる
中高年の日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究において,身体活動(歩行やスポーツ)と,脳卒中・冠動脈疾患・心血管疾患による死亡リスクとの関連を検討した。9.7年間の追跡の結果,歩行やスポーツなどの身体活動が虚血性脳卒中や冠動脈疾患による死亡リスクを減少させる可能性が示唆された。
Noda H, et al.; JACC Study Group. Walking and sports participation and mortality from coronary heart disease and stroke. J Am Coll Cardiol. 2005; 46: 1761-7.
- コホート
- 国内45地区に居住し,1988~1990年のベースライン調査でスポーツおよび歩行時間に関するデータが得られた40~79歳の77676例のうち,脳卒中,冠動脈疾患または癌の既往のある4411例を除いた73265例(男性31023例,女性42242例)を平均9.7年間追跡。
歩行時間,スポーツ参加時間についてそれぞれ全体を以下の4つのカテゴリーに分けて解析をおこなった。
歩行: 30分未満/日, 30分/日, 30分~1時間未満/日, 1時間以上/日
スポーツ: 1時間未満/週, 1~2時間/週, 3~4時間/週, 5時間以上/週 - 結 果
- 追跡期間中に心血管疾患により死亡したのは1946例。内訳は以下のとおり(それぞれ男性,女性)。
・全脳卒中 499, 424
脳梗塞 186, 141
脳出血 127, 92
くも膜下出血 57, 98
・冠動脈疾患 244, 153
毎日1時間以上歩行する例では,30分歩行する例に比べて肉体労働者の比率,魚の摂取量,運動をする率が有意に高く,大学卒の比率,高血圧既往,糖尿病既往,BMIが有意に低かった。
これらの傾向は,スポーツ参加時間でみてもほぼ同じだった。
毎日1時間以上歩行する例では,脳梗塞死,冠動脈疾患死,および全心血管疾患死のリスクが17~33%低下した(vs. 毎日30分)。多変量調整後のハザード比は以下のとおり(*は有意差あり)。
・全脳卒中死 0.88 (95%信頼区間0.74-1.05)
・脳梗塞死 0.71* (0.54-0.94)
・冠動脈疾患死 0.84 (0.64-1.09)
・全心血管疾患死 0.84* (0.75-0.95)
また,毎日30分未満の例では,全脳卒中死(ハザード比1.37,95%信頼区間1.10-1.72, P=0.005)および全心血管疾患死(1.35,1.16-1.57,P<0.001)のリスクが有意に増加した。
スポーツ参加時間と冠動脈疾患死および全心血管疾患死の間には,強い逆相関関係が見られた。週5時間以上スポーツをする例におけるハザード比は以下のとおり(vs. 週1~2時間)。
・冠動脈疾患死 0.51 (0.32-0.82, P=0.005)
・全心血管疾患死 0.73 (0.60-0.90, P=0.003)
◇ 結論
中高年の日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究において,身体活動(歩行やスポーツ)と,脳卒中・冠動脈疾患・心血管疾患による死亡リスクとの関連を検討した。9.7年間の追跡の結果,歩行やスポーツなどの身体活動が虚血性脳卒中や冠動脈疾患による死亡リスクを減少させる可能性が示唆された。