[2006年文献] 長生きした親の子は,全死亡,心血管死,脳卒中死リスクが低い
親が長寿であったかどうかと子の死因別死亡リスクとの関連について,大規模コホート研究における検討を行った。その結果,長生きした親の子(とくに両親がそうである場合)では,全死亡,心血管死亡および脳卒中死亡のリスクが低いことが示された。
Ikeda A, et al.; JACC Study Group. Parental longevity and mortality amongst Japanese men and women: the JACC Study. J Intern Med. 2006; 259: 285-95.
- コホート
- 国内の45地区に居住し,1988~1990年のベースライン調査に参加した40~79歳の110792人(男性46465人,女性64327人)のうち,質問票への有効回答が得られなかった人などを除いた87814人(男性36449人,女性51365人)について,両親の生死または死亡時年齢についての情報を得た。さらに,ベースライン時に父親が80歳未満かつ存命だった男性12868人および女性17064人,ならびに,ベースライン時に母親が85歳未満かつ存命だった男性12096人および女性15754人,脳卒中・冠動脈疾患・癌のいずれかの既往をもつ男性1753人および女性2223人を除外したうえで,以下の最終解析対象者を約10年間追跡した。
父親に関する解析: 男性21828人,女性32078人
母親に関する解析: 男性22600人,女性33388人
両親の死亡時年齢により,全体を以下のカテゴリーに分けて解析を行った。
父親の死亡時年齢: <60歳,60~69歳,70~79歳,≧80歳
母親の死亡時年齢: <65歳,65~74歳75~84歳,≧85歳
父親が80歳以上で生存している場合,および母親が85歳以上で生存している場合は,それぞれの年齢がもっとも高いグループとした。 - 結 果
- ◇ 父親に関する解析
追跡期間(520202人・年)中の死亡は6742人(男性4035人,女性2707人)。
うち,心血管疾患死亡は2060人(1149人,911人),脳卒中死亡は992人(537人,455人),冠動脈疾患死亡は403人(247人,156人),癌死亡は2586人(1619人,967人)であった。
80歳以上まで生存していた父親をもつ男性では,60歳未満で死亡した父親をもつ男性にくらべ,全死亡,心血管疾患死亡,脳卒中死亡,冠動脈疾患死亡,癌死亡のリスク(年齢調整)がいずれも有意に15~38%低かった。
80歳以上まで生存していた父親をもつ女性では,60歳未満で死亡した父親をもつ女性にくらべ,全死亡,心血管疾患死亡,脳卒中死亡,癌死亡,呼吸器疾患死亡のリスク(年齢調整)がいずれも有意に20~38%低かった。
これらの結果は,喫煙,飲酒,高血圧既往,糖尿病既往などの因子で調整しても変わらなかった。
◇ 母親に関する解析
追跡期間(540409人・年)中の死亡は6964人(男性4180人,女性2784人)。
うち,心血管疾患死亡は2107人(1167人,935人),脳卒中死亡は1009人(545人,464人),冠動脈疾患死亡は410人(252人,158人),癌死亡は2709人(1699人,1010人)であった。
85歳以上まで生存していた母親をもつ人では,男女とも,65歳未満で死亡した母親をもつ人にくらべ,全死亡,心血管疾患死亡,脳卒中死亡のリスク(年齢調整)がいずれも有意に低かった。
これらの結果は,喫煙,飲酒,高血圧既往,糖尿病既往などの因子で調整しても変わらなかった。
本人の年齢が高くなるほど,親が生存している確率が低くなることから,本人の年齢により層別化を行って検討したが,結果に年齢層ごとの違いはみられなかった。
◇ 双方の親を考慮した解析
ともに長生きだった両親(父親が80歳以上まで生存,母親が85歳以上まで生存)をもつ人では,ともに早く亡くなった両親をもつ人よりも,全死亡,脳卒中死亡,心血管疾患死亡のリスク(多変量調整)が17~47%有意に低かった。
長生きだった父親と早く亡くなった母親をもつ人でも,性別を問わず,ともに早く亡くなった両親をもつ人にくらべて全死亡,心血管疾患死亡,脳卒中死亡,冠動脈疾患死亡のリスク(多変量調整)が15~30%有意に低かった。
早く亡くなった父親と長生きだった母親をもつ人でも,性別を問わず,ともに早く亡くなった両親をもつ人にくらべて全死亡,心血管疾患死亡,脳卒中死亡のリスク(多変量調整)が8~40%有意に低かった。
◇ 結論
親が長寿であったかどうかと子の死因別死亡リスクとの関連について,大規模コホート研究における検討を行った。その結果,長生きした親の子(とくに両親がそうである場合)では,全死亡,心血管死亡および脳卒中死亡のリスクが低いことが示された。