[2005年文献] 輸血歴は,脳梗塞死,脳出血死,および冠動脈疾患死亡の有意かつ独立した危険因子
中高年の日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究において,輸血歴と,脳出血や脳梗塞,冠動脈疾患による死亡リスクとの関連を検討した。10年間の追跡の結果,輸血歴が脳卒中死亡および冠動脈疾患死亡と有意に関連することが示された。
Yamada S, et al.; JACC Study Group. History of blood transfusion before 1990 is a risk factor for stroke and cardiovascular diseases: the Japan collaborative cohort study (JACC study). Cerebrovasc Dis. 2005; 20: 164-71.
- コホート
- 日本各地の45自治体に居住し,1988~1990年のベースライン調査に参加した40~79歳の110792例のうち,輸血歴に関するデータが得られ,かつ脳卒中,心疾患または癌の既往のない88312例を10年間追跡(871437人・年)。
男性は36823例,女性は51489例。 - 結 果
- 輸血歴があるのは10.6%(9361例)。うち男性は3632例,女性は5729例。
輸血例で,輸血未経験例にくらべて有意に高い値を示したのは,年齢,収縮期血圧(男性のみ),高血圧(男性のみ),糖尿病既往,腎疾患既往,肝疾患既往,胆石症既往,胃・十二指腸潰瘍既往,結核既往,外傷歴,腹部手術歴(P<0.0001)。
輸血例で,輸血未経験例にくらべて有意に低い値を示したのは,BMI(男性のみ),体重(P<0.0001)。
追跡期間中の死亡の内訳,および年間死亡率(10万人あたり)は以下のとおり。
・脳梗塞 587例(男性334例,女性253例), 年間死亡率 67.4
・脳出血 309例(176例,133例), 年間死亡率 35.5
・冠動脈疾患 472例(274例,198例), 年間死亡率 54.2
輸血例の死亡の相対リスクは以下のとおり(vs. 輸血未経験例。それぞれ年齢調整後の値,多変量調整後の値)。
・脳出血 1.73 (P<0.001), 2.16 (P<0.001)
・脳梗塞 1.46 (P<0.001), 1.63 (P=0.004)
・冠動脈疾患 1.62 (P<0.001), 1.66 (P=0.005)
年齢,高血圧,糖尿病,喫煙本数,飲酒量,BMIなどの因子の補正後も,輸血例における各心血管疾患死亡のリスクは,輸血未経験例よりも有意に高かった。
さらに腎疾患既往,肝疾患既往,胆石症既往,胃・十二指腸潰瘍既往,結核既往,外傷歴,腹部手術歴の補正後も,輸血例における各心血管疾患死亡のリスクは,輸血未経験例よりも有意に高かった。
一方,上記の既往・経験がない輸血例についてのみ解析をおこなったところ,外傷未経験および腹部手術未経験の輸血例において脳出血死亡および脳梗塞死亡リスクの有意性がそれぞれ消失したが,冠動脈疾患死亡リスクは有意に高いままだった。
◇ 結論
中高年の日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究において,輸血歴と,脳出血や脳梗塞,冠動脈疾患による死亡リスクとの関連を検討した。10年間の追跡の結果,輸血歴が脳卒中死亡および冠動脈疾患死亡と有意に関連することが示された。