[2003年文献] 高血圧,脳卒中家族歴,喫煙,および輸血歴は,くも膜下出血死亡の危険因子
中高年の日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究において,くも膜下出血死亡の危険因子の検討を行った。9.9年間の追跡の結果,高血圧,脳卒中家族歴,喫煙とともに,あらたに輸血歴がくも膜下出血死亡の危険因子として見出されたが,そのメカニズムについては今後の研究がまたれる。
Yamada S, et al.; Japan Collaborative Cohort Study Group. Risk factors for fatal subarachnoid hemorrhage: the Japan Collaborative Cohort Study. Stroke. 2003; 34: 2781-7.
- コホート
- 国内の45地区に居住し,1988~1990年のベースライン調査に参加した40~79歳の110792例のうち,脳卒中既往のある1499例をのぞいた109293例を約10年間追跡。
男性は45551例,女性は63742例。 - 結 果
- くも膜下出血による死亡は244例(男性88例,女性156例)。
女性では,年齢とともに急激に発症率が増加した。
くも膜下出血死亡例で非発症例に比べ有意に高い値を示したのは,年齢,血圧,高血圧,脳卒中家族歴,喫煙率。
単変量解析によると,くも膜下出血死亡のハザード比との有意な関連がみられたのは高血圧,脳卒中家族歴,喫煙,および輸血歴であった。
もっとも強力な危険因子は喫煙で,喫煙のハザード比は男性3.40(95%信頼区間1.55-7.45,vs. 喫煙未経験者),女性2.96(1.82-4.81)だった。男性の喫煙の人口寄与危険度は36.2%。禁煙例では,有意なリスク増加は見られなかった。
高血圧のハザード比は2.70(95%信頼区間1.80-4.07,vs. 正常)。
男性の多量飲酒のハザード比は2.08(vs. 非飲酒・不定期飲酒例,1.15-3.76)。飲酒頻度の高い(毎日飲酒)男性でも,有意なリスク上昇が見られた(1.94,1.03-3.67,vs. 非喫煙・不定期喫煙例)。
多変量解析(性別調整)を行った結果,くも膜下出血の有意かつ独立した危険因子は高血圧,脳卒中家族歴,喫煙,および輸血歴であった。
輸血歴については,心疾患既往,腎疾患,肝疾患,胃十二指腸潰瘍,手術,外傷などを考慮に入れた解析も行ったが,これらのいずれも交絡因子ではなかった。
女性では精神的高ストレス(ハザード比2.89,95%信頼区間1.11-7.54 vs. 低ストレス),男性ではBMI低値(18.5kg/m2未満)(2.72,1.03-7.23 vs. 18.5 kg/m2以上25.0 kg/m2未満))もくも膜下出血死亡の有意な危険因子であった。
◇ 結論
中高年の日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究において,くも膜下出血死亡の危険因子の検討を行った。9.9年間の追跡の結果,高血圧,脳卒中家族歴,喫煙とともに,あらたに輸血歴がくも膜下出血死亡の危険因子として見出されたが,そのメカニズムについては今後の研究がまたれる。