[2016年文献] 朝食をとらない習慣は全死亡リスクと有意な正の関連がみられる
朝食をとらないことは,体重増加,脂質異常,インスリン感受性,高血圧・糖尿病・冠動脈疾患の発症と関連があるとの報告が多数あるが,死亡リスクとの関連を調べた研究はほとんどない。そこで,日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究において,朝食習慣の有無と心血管疾患(CVD)死亡・癌死亡・全死亡リスクとの関連を検討した。その結果,朝食をとらない男性では,CVD死亡・全死亡リスクが高く,朝食をとらない女性では,全死亡リスクが高かった。また,朝食をとらない人には,喫煙や運動不足などの不健康な生活習慣が多くみられた。朝食をとる習慣は,生活習慣の改善を介して,生活習慣病の予防につながる可能性が示唆された。
Yokoyama Y, et al. Skipping Breakfast and Risk of Mortality from Cancer, Circulatory Diseases and All Causes: Findings from the Japan Collaborative Cohort Study. Yonago Acta Med. 2016; 59: 55-60.
Erratum for Yokoyama Y et al. Yonago Acta Med. 2019; 62: 308.
- コホート
- 国内の45地区に居住し,1988~1990年のベースライン調査に参加し,自己記入式質問票で生活習慣と既往歴について回答した40~79歳の110585人(男性46395人,女性64190人)を対象とした。そのうち,ベースライン時に,癌・脳卒中・心筋梗塞の既往をもつ4407人,5年以内に死亡した3609人,朝食に関する質問に回答がなかった19159人を除いた,83410人(男性34128人,女性49282人)を2009年まで19.4年間(中央値)追跡した。
朝食をとる習慣がある人の定義は,「和食・洋食・茶粥・その他をとっている人」とし,朝食をとる習慣がない人の定義は,「朝食をとらない人,またはほとんどとらない人」とした。 - 結 果
- 追跡期間中に死亡したのは男性9399人,女性7713人で,内訳はそれぞれ以下のとおり。
癌死亡: 3480人,2288人
心血管疾患(CVD)死亡: 2569人,2564人
◇ 対象背景
朝食をとる習慣がある人は,男性33039人,女性48189人,朝食をとる習慣のない人は,男性1089人,女性1093人であった。男女ともに,朝食の習慣のある人ほど高い傾向を示していたのは,年齢,運動(≧3時間/週),ウォーキング(≧60分/日),昼間勤務,総エネルギー摂取量であった。朝食の習慣のある人ほど低い傾向を示していたのは,喫煙歴,夕食時間が不規則な生活,スナック菓子を食べる頻度であった。また,女性では,睡眠時間が長い人ほど,朝食をとる習慣があった。
◇ 朝食の習慣とCVD死亡・癌死亡・全死亡リスクとの関連
朝食の習慣がある人とない人でみた,癌死亡・CVD死亡・全死亡の多変量調整†ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおり。朝食の習慣がない男性は,CVD死亡・全死亡リスクが有意に高く,朝食の習慣がない女性は,全死亡リスクが有意に高かった。
(†年齢,高血圧既往,糖尿病既往,BMI,喫煙,飲酒頻度,教育歴,運動の習慣,歩行時間,睡眠時間,結婚歴,勤務時間帯で調整)
・CVD死亡(朝食の習慣あり[対照] vs. 朝食の習慣なし)
[男性]1.42(1.02-2.02),P=0.0485,[女性]1.19(0.71-2.00),P=0.1828
・癌死亡
1.27(0.98-1.65),P=0.0741,1.30(0.87-1.94),P=0.1890
・全死亡
1.43(1.21-1.69),P<0.0001,1.34(1.04-1.73),P=0.0234
■ 結論
朝食をとらないことは,体重増加,脂質異常,インスリン感受性,高血圧・糖尿病・冠動脈疾患の発症と関連があるとの報告が多数あるが,死亡リスクとの関連を調べた研究はほとんどない。そこで,日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究において,朝食習慣の有無と心血管疾患(CVD)死亡・癌死亡・全死亡リスクとの関連を検討した。その結果,朝食をとらない男性では,CVD死亡・全死亡リスクが高く,朝食をとらない女性では,全死亡リスクが高かった。また,朝食をとらない人には,喫煙や運動不足などの不健康な生活習慣が多くみられた。朝食をとる習慣は,生活習慣の改善を介して,生活習慣病の予防につながる可能性が示唆された。