[2016年文献] テレビの視聴時間が長い人では,肺塞栓症死亡リスクが高い
これまでに,長時間のテレビ視聴と肺塞栓症や深部静脈血栓塞栓症のリスクとの関連が症例集積研究(case series study)などから報告されているが,視聴時間と肺塞栓症死亡リスクの関連について前向きに検討を行った研究はないことから,日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究における検討を行った。19.2年間(中央値)の追跡の結果,1日に5時間以上テレビを視聴する人では,2.5時間未満の人にくらべ,肺塞栓症死亡リスクが有意に高くなっており,長時間のテレビ視聴が肺塞栓症死亡リスクの危険因子となることが示唆された。
Shirakawa T, et al. Watching Television and Risk of Mortality From Pulmonary Embolism Among Japanese Men and Women: The JACC Study (Japan Collaborative Cohort). Circulation. 2016; 134: 355-7.
- コホート
- 国内の45地区の居住者で,1988~1990年のベースライン調査に参加し,既往歴や生活習慣に関する自己記入式質問票に回答した40~79歳の110,585人のうち,テレビの視聴時間に関する質問への回答がない人,癌,脳卒中,心筋梗塞,または肺塞栓症の既往のある人を除いた86,024人(男性36,006人,女性50,018人)を2009年末まで19.2年間(中央値)追跡。
ベースライン調査での自己記入式質問票により,テレビの1日平均視聴時間についてたずね,対象を以下の3つのカテゴリーに分類した。
<2.5時間(678,199人・年)
2.5~4.9時間(562,449人・年)
≧5.0時間(157,922人・年) - 結 果
- 追跡期間中に59人が肺塞栓症で死亡した。
テレビの視聴時間のカテゴリーごとの肺塞栓症死亡の多変量調整ハザード比*(95%信頼区間)は以下のとおりで,視聴時間が長いほど肺塞栓症死亡のリスクが増加した(*年齢,性,BMI,高血圧既往,糖尿病既往,喫煙,ストレス,教育,歩行時間,運動時間で調整)。
<2.5時間:1.0
2.5~4.9時間:1.7(0.9-3.0)
≧5.0時間:2.5(1.2-5.3)
また,テレビの視聴時間を連続変数として扱った解析でも,視聴が2時間長くなるごとに,肺塞栓症死亡リスクが有意に増加していた(ハザード比*1.4[1.0-1.8],P=0.04)。
◇ 結論
これまでに,長時間のテレビ視聴と肺塞栓症や深部静脈血栓塞栓症のリスクとの関連が症例集積研究(case series study)などから報告されているが,視聴時間と肺塞栓症死亡リスクの関連について前向きに検討を行った研究はないことから,日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究における検討を行った。19.2年間(中央値)の追跡の結果,1日に5時間以上テレビを視聴する人では,2.5時間未満の人にくらべ,肺塞栓症死亡リスクが有意に高くなっており,長時間のテレビ視聴が肺塞栓症死亡リスクの危険因子となることが示唆された。