[2006年文献] 魚またはn-3多価不飽和脂肪酸の摂取量が多いほど,冠動脈疾患のリスクが低下した
40~59歳の日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究において,魚およびn-3多価不飽和脂肪酸の摂取量が多いと冠動脈疾患の発症リスクが低下するという仮説を検討した。11年間の追跡の結果,魚の摂取量が多い人(週8回,180 g/日)では,摂取量が中程度の人(週1回,23 g/日)にくらべて冠動脈疾患発症リスクが低く,この結果はとくに心筋梗塞および非致死性冠動脈疾患について顕著であった。以上の結果,中年層では,魚を多く摂取することによって冠動脈疾患発症リスクを抑制できる可能性が示唆された。
Iso H, et al.; JPHC Study Group. Intake of fish and n3 fatty acids and risk of coronary heart disease among Japanese: the Japan Public Health Center-Based (JPHC) Study Cohort I. Circulation. 2006; 113: 195-202.
- コホート
- 1990年1月1日時点で対象4保健所の管轄下14行政区内に居住していた40~59歳の54498例のうち,心筋梗塞,狭心症,脳卒中または癌の既往がなく,かつアンケートによる調査結果および魚食についてのデータが得られた41578例(男性19985例,女性21593例)を11年間追跡(1990~2001年,477325人・年)。
地域ごとの参加者数は以下のとおり。
・岩手県二戸保健所: 男性6022例,女性6269例
・秋田県横手保健所: 男性7559例,女性8223例
・長野県佐久保健所: 男性6173例,女性6046例
・沖縄県石川保健所: 男性7309例,女性6897例 - 結 果
- 魚の摂取量と相関したのは,総エネルギー摂取量,各脂肪酸摂取量,血中総コレステロール,肉類(牛,豚,羊),鶏肉,鶏卵,果物,野菜,乳製品摂取量。
258例が冠動脈疾患を発症(男性207例,女性51例)し,うち196例が非致死性,62例が致死性だった。
1日あたりの魚の摂取量五分位(Q1~Q5)ごとの冠動脈疾患の発症率(1000人・年あたり)は,以下のとおり。
・Q1 (平均週1回,中央値23g/日): 0.7 (95%信頼区間0.5-0.9)
・Q2 (51g/日): 0.4 (0.3-0.6)
・Q3 (78g/日): 0.5 (0.4-0.7)
・Q4 (114g/日): 0.4 (0.3-0.6)
・Q5 (平均週8回,180g/日): 0.3 (0.2-0.4)
魚の摂取量は,全冠動脈疾患,心筋梗塞,および非致死性冠動脈疾患と有意な逆相関を示した。疾患ごとのハザード比(Q1 vs. Q5)は以下のとおり。
・全冠動脈疾患: 0.63 (95%信頼区間0.38-1.04)
・全心筋梗塞: 0.47 (0.26-0.85)
・明らかな心筋梗塞: 0.44 (0.24-0.81)
・非致死性冠動脈疾患: 0.43 (0.23-0.81)
n-3多価不飽和脂肪酸摂取量は,全冠動脈疾患と有意な逆相関を示した。特に非致死性冠動脈疾患において強い逆相関が見られた。疾患ごとのハザード比(Q1 vs. Q5)は以下のとおり。
・全冠動脈疾患: 0.58 (95%信頼区間0.35-0.97)
・全心筋梗塞: 0.43 (0.24-0.78)
・明らかな心筋梗塞: 0.35 (0.18-0.66)
・非致死性冠動脈疾患: 0.33 (0.17-0.63)
・心臓突然死: 1.24 (0.39-3.98)
・致死性冠動脈疾患: 1.54 (0.60-3.99)