[2004年文献] 男性では,喫煙本数が多いほど,くも膜下出血および脳梗塞の発症リスクが高くなった
40~59歳の日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究において,喫煙と全脳卒中および各病型の発症リスクとの関連を男女別に検討した。11年間の追跡の結果,喫煙は,男女ともに全脳卒中およびくも膜下出血発症リスクを有意に増加させた。病型別にみると,男性の喫煙は,全脳梗塞,ラクナ梗塞およびアテローム血栓性脳梗塞の発症リスクとも有意に関連していた。
Mannami T, et al.; Japan Public Health Center-Based Prospective Study on Cancer and Cardiovascular Disease Group. Cigarette smoking and risk of stroke and its subtypes among middle-aged Japanese men and women: the JPHC Study Cohort I. Stroke. 2004; 35: 1248-53.
- コホート
- 1990年1月1日時点で対象4保健所の管轄下14行政区内に居住していた40~59歳の54498例のうち,心筋梗塞,狭心症,脳卒中または癌の既往がなく,かつアンケートによる調査結果および喫煙についてのデータが継続して得られた41282例(男性19782例,女性21500例)を11年間追跡(1990~2001年,477325人・年)。
全体を,喫煙未経験例(非喫煙例),禁煙例,喫煙例に分けて検討を行った。
地域ごとの参加者数は以下のとおり。
・岩手県二戸保健所: 男性6022例,女性6269例
・秋田県横手保健所: 男性7559例,女性8223例
・長野県佐久保健所: 男性6173例,女性6046例
・沖縄県石川保健所: 男性7309例,女性6897例 - 結 果
- 男性702例,女性447例が脳卒中を発症した。うち画像診断による確定診断は男性619例,女性411例。
脳卒中および各病型の発症数男性 女性 全脳卒中 702 447 脳梗塞 全脳梗塞 327 176 ラクナ梗塞 144 90 アテローム血栓性脳梗塞* 56 33 脳塞栓 86 31 その他 41 22 脳出血 219 129 くも膜下出血 73 106 *アテローム血栓性脳梗塞=large-artery occlusive infarction
喫煙例の脳卒中および各病型の相対危険度(vs. 非喫煙例)は以下のとおり。
・全脳卒中: 男性 1.27, 女性 1.98
・くも膜下出血: 男性 3.60, 女性 2.70
・脳梗塞: 男性 1.56, 女性1.57
男性のくも膜下出血,全脳梗塞,ラクナ梗塞およびアテローム血栓性脳梗塞では,喫煙本数と発症リスクが有意に相関した。脳塞栓では相関なし。
喫煙例の全脳卒中発症相対危険度(vs. 禁煙例+非喫煙例)は以下のとおり。
・男性 1.40 (95%信頼区間1.19-1.64)
・女性 1.96 (1.40-2.73)
喫煙率を男性60%,女性9%としたとき,全脳卒中に対する喫煙の人口寄与危険度は男性17%,女性5%。
男性の禁煙例について,禁煙後の経過年数ごとの脳卒中発症リスクを調べた結果,全脳卒中の相対危険度は以下のようになった。
禁煙後経過年数と全脳卒中発症の相対危険度相対危険度(vs. 喫煙例) 95%信頼区間 2年未満 0.82 0.49-1.38 2-4年 0.62 0.40-0.96 5-9年 0.61 0.42-0.87 10-14年 0.61 0.40-0.93 15年以上 0.65 0.46-0.93 非喫煙例 0.42 0.20-0.88