[2008年文献] やせていた男性が中年までに10 kg以上太ると冠動脈疾患リスクが増加

BMIおよび20歳のときからの体重変化と冠動脈疾患リスクとの関連について,日本人一般住民を対象とした多施設の大規模コホート研究により検討した。その結果,男性ではBMIが30 kg/m2以上の人,および20歳時に痩身で10 kg以上体重が増加した人における有意な冠動脈疾患リスク増加がみとめられた。女性では関連なし。層別化解析の結果より,冠動脈疾患予防のためには,若いときにやせていた男性の体重管理が重要と考えられる。

Chei CL, et al. Body mass index and weight change since 20 years of age and risk of coronary heart disease among Japanese: the Japan Public Health Center-Based Study. Int J Obes (Lond). 2008; 32: 144-51.pubmed

コホート
1990年時点で対象4保健所の管轄行政区内に居住していた40~59歳の41279人(コホートI),および1993年時点で対象5保健所の管轄行政区内に居住していた40~69歳の49400人(コホートII)のうち,脳卒中,心筋梗塞,狭心症または癌の既往がある人,およびBMIが14 kg/m2未満または40 kg/m2以上の人を除いた90679人を2001年まで追跡(87万9619人・年)。

◇ 体重変化の評価
・ コホートI: アンケートにより,20歳時にくらべて体重が「減った」「変わらない」「増えた」のいずれにあてはまるかをたずねた。回答が得られた40750人(男性19574人,女性21176人)について,体重変化の解析を行った。
・ コホートII: アンケートにより,20歳時にくらべて体重が「増えた」「変わらない」「減った」のいずれにあてはまるかをたずねるとともに,20歳時の体重を具体的にたずねた。回答が得られた31380人(男性15580人,女性15800人)について,体重変化の解析を行った。
結 果
ベースライン時の平均BMIは男女ともに23.5 kg/m2だった。
全体を,BMI(kg/m2)により7つのカテゴリーに分けて解析を行った。分布は以下のとおり(それぞれ男性,女性の値)。
   14.0~18.9 kg/m2: 4.1 %,5.3 %
   19.0~20.9 kg/m2: 14.5 %,15.3 %
   21.0~22.9 kg/m2: 25.8 %,26.0 %
   23.0~24.9 kg/m2: 27.6 %,24.5 %
   25.0~26.9 kg/m2: 16.9 %,15.6 %
   27.0~29.9 kg/m2: 9.0 %,10.0 %
   30.0~39.9 kg/m2: 2.2 %,3.3 %
男女ともに,BMIが高いほど,高血圧や糖尿病が多く,魚の摂取量が少なかった。また,BMIが21.0 kg/m2未満の人は余暇の運動が少なかった。
男性では,BMIが高いほど,若く,喫煙率が低く,飲酒量が多かった。

追跡期間中に冠動脈疾患を発症したのは518人(男性399人,女性119人)。
うち心筋梗塞は429人(334人,95人),心突然死は89人(65人,24人)。

◇ BMIと冠動脈疾患リスク
BMIカテゴリーごとに全冠動脈疾患,心筋梗塞および心突然死のハザード比を算出した結果,男性では,多変量調整後もBMIと全冠動脈疾患リスク,および心筋梗塞リスクとの有意な関連がみとめられた(それぞれP for trend=0.03,P=0.002)。一方,女性ではいずれもBMIとの有意な関連はみられなかった。
男性におけるBMIカテゴリーごとの全冠動脈疾患の多変量調整ハザード比(95 %信頼区間)は以下のとおり(*P=0.02)。
   14.0~18.9 kg/m2: 0.7 (0.4-1.3)
   19.0~20.9 kg/m2: 0.8 (0.6-1.1)
   21.0~22.9 kg/m2: 0.8 (0.6-1.1)
   23.0~24.9 kg/m2: 1.00 (対照)
   25.0~26.9 kg/m2: 0.9 (0.7-1.3)
   27.0~29.9 kg/m2: 1.1 (0.8-1.6)
   30.0~39.9 kg/m2: 1.8* (1.1-3.0)

◇ 20歳時からの体重変化と冠動脈疾患リスク
20歳時からの体重変化の状況(減った/変わらない/増えた)ごとの冠動脈疾患の多変量調整ハザード比(95 %信頼区間)は以下のとおりで,「体重が増えた」と答えた人における有意なリスク上昇がみとめられた(*P=0.02)。
   「減った」 1.2 (0.9-1.8),
   「変わらない」 1.0 (対照)
   「増えた」 1.4* (1.1-1.8)

さらに,20歳時の体重が得られているコホートIIを対象として,20歳時にBMIが21.7 kg/m2未満だった人と21.7 kg/m2以上だった人に層別化し,解析を行った。
その結果,20歳時にBMIが21.7 kg/m2未満だった場合,10 kg以上体重が増加した人の冠動脈疾患の多変量調整ハザード比が有意に上昇していた(2.1 vs. 体重変化が±5 kg以内だった人,95 %信頼区間1.0-4.4,P=0.04)。20歳時にBMIが21.7 kg/m2以上だった人では,10 kg以上体重が減少した場合にリスクが上昇する傾向がみとめられたが,多変量調整を行うと有意ではなくなった。
女性では,20歳時の体重で層別化を行っても,体重変化と冠動脈疾患リスクとの関連はみとめられなかった。


◇ 結論
BMIおよび20歳のときからの体重変化と冠動脈疾患リスクとの関連について,日本人一般住民を対象とした多施設の大規模コホート研究により検討した。その結果,男性ではBMIが30 kg/m2以上の人,および20歳時に痩身で10 kg以上体重が増加した人における有意な冠動脈疾患リスク増加がみとめられた。女性では関連なし。層別化解析の結果より,冠動脈疾患予防のためには,若いときにやせていた男性の体重管理が重要と考えられる。


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