[2008年文献] カルシウム摂取量は脳卒中リスクと逆相関する
「カルシウムの摂取は心血管疾患リスクと逆相関する」という仮説について,欧米よりもカルシウム摂取量がかなり低い日本人集団において検証するために,12.9年間の前向き観察研究を行った。その結果,カルシウム摂取量は脳卒中リスクとの有意な負の相関を示したが,冠動脈疾患との関連はみとめられなかった。
Umesawa M, et al.; JPHC Study Group. Dietary calcium intake and risks of stroke, its subtypes, and coronary heart disease in Japanese: the JPHC Study Cohort I. Stroke. 2008; 39: 2449-56.
- コホート
- 1990年1月1日時点で対象4保健所の管轄下14行政区内に居住しており,質問票に回答した40~59歳の54498人のうち,心筋梗塞,狭心症,脳卒中またはがんの既往がなく,ベースラインの質問表への回答を完了した41526人(男性19947人,女性21579人)を1990~2003年にかけて平均12.9年間追跡。
カルシウムの摂取量(乳製品由来および非乳製品由来のカルシウム摂取量も含む)は食物摂取頻度調査票(food frequency questionnaire: FFQ)により調査し,1日あたりのカルシウム摂取量(中央値)により全体を以下のように五分位に分けて解析を行った。
・ 総カルシウム摂取量
Q1: 233 mg,Q2: 344 mg,Q3: 439 mg,Q4: 603 mg,Q5: 753 mg
・ 乳製品由来のカルシウム摂取量
Q1: 0 mg,Q2: 26 mg,Q3: 49 mg,Q4: 90 mg,Q5: 116 mg
・ 非乳製品由来のカルシウム摂取量
Q1: 214 mg,Q2: 311 mg,Q3: 386 mg,Q4: 516 mg,Q5: 652 mg - 結 果
- 脳卒中の発症は1321人で,うち脳梗塞は664人,脳出血は425人,くも膜下出血は217人,病型不明が15人。
冠動脈疾患の発症は322人だった。
カルシウム摂取(乳製品由来,非乳製品由来とも)と正の相関を示したのは,年齢,糖尿病既往歴,n-3系不飽和脂肪酸摂取,ナトリウム摂取,カリウム摂取で,負の相関を示したのはBMIと喫煙。
乳製品由来のカルシウム摂取は,血圧と負の相関を示した。
◇ カルシウム摂取量と心血管疾患リスク
総カルシウム摂取,乳製品由来のカルシウム摂取,および非乳製品由来のカルシウム摂取と心血管疾患リスク(全脳卒中,脳出血,脳梗塞,くも膜下出血,冠動脈疾患)との関連を検討した。
・ 総カルシウム摂取
全脳卒中リスクと有意な負の相関(P=0.02),くも膜下出血リスクとボーダーライン上の有意性をもった負の相関(P=0.09)を示した。
・ 乳製品由来のカルシウム摂取
全脳卒中リスクと負の相関傾向,および脳梗塞リスクと有意な負の相関を示した(それぞれP for trend=0.07,0.05)。
・ 非乳製品由来のカルシウム摂取
いずれの心血管疾患リスクとも関連を示さなかった。
◇ 結論
「カルシウムの摂取は心血管疾患リスクと逆相関する」という仮説について,欧米よりもカルシウム摂取量がかなり低い日本人集団において検証するために,12.9年間の前向き観察研究を行った。その結果,カルシウム摂取量は脳卒中リスクとの有意な負の相関を示したが,冠動脈疾患との関連はみとめられなかった。