[2013年文献] 緑茶またはコーヒーの摂取量が多いほど脳卒中発症リスクが低下
日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究により,緑茶とコーヒー摂取量の相互作用とCVDおよび脳卒中の病型別発症リスク(とくに脳出血単独)との関連を初めて検討した。その結果,緑茶もしくはコーヒーの摂取量が多いほど,CVDおよび脳卒中各病型の発症リスクが低下することが示された。
Kokubo Y, et al. The Impact of Green Tea and Coffee Consumption on the Reduced Risk of Stroke Incidence in Japanese Population: The Japan Public Health Center-Based Study Cohort. Stroke. 2013; 44: 1369-74.
- コホート
- JPHCコホートⅠ,Ⅱ。
45歳から74歳の登録者のうち,調査票にて心血管疾患(CVD)または癌の既往ありと回答した5061人,追跡不能あるいは基礎調査前に転居した1327人,食事摂取頻度調査票(FFQ:food-frequency questionnaire)の回答が不完全な12572人を除外した男性38029人,女性43949人を2007年末までの平均13年間(1066718人・年)追跡。
コホートⅠ,ⅡそれぞれでFFQを用い,食習慣を評価した(回答率:男性72%[47400人],女性79%[53538人])。食品138品目について摂取頻度と,各品目の1回あたりの相対的な摂取量をたずね,各種栄養素,食品群の摂取量を推定した。
摂取頻度は「全く摂取しない」「1~3回/月」「1~2回/週」「3~4回/週」「5~6回/週」「1回/日」「2~3回/日」「4~6回/日」「7回以上/日」,1回あたりの摂取量は「小(標準より50%ぐらい少ない)」「標準」「大(標準より50%ぐらい多い)」とした。
緑茶とコーヒーの消費量については,摂取頻度と摂取量をたずねた結果をもとに,緑茶は「0回/週」「1~2回/週」「3~6回/週」「1杯/日」「2~3杯/日」「4杯以上/日」,コーヒーは「0回/週」「1~2回/週」「3~6回/週」「1杯/日」「2杯以上/日」のカテゴリーにそれぞれ対象者を分類し,解析した。ノンカフェインコーヒーについては日本ではあまり普及していないため,調査しなかった。 - 結 果
- ◇ 対象背景
ベースライン時の緑茶摂取量が多い人ほど,運動をよくしていて,コーヒー摂取量が多い人ほど,若く,喫煙率が高く,運動をよくしており,降圧薬服用や糖尿病の既往が少なかった。
追跡期間中に,脳卒中3425人(脳梗塞1964人,脳出血1001人,くも膜下出血460人),CHD910人(明らかな心筋梗塞489人,心臓突然死28人)の全4335人のCVDを確認した。
◇ 緑茶の摂取量とCVD
緑茶の摂取量が多いほど,CVD,全脳卒中,脳梗塞,脳出血の発症リスクは有意に低下した(それぞれP for trend<0.001,P for trend<0.001,P for trend<0.009,P for trend<0.001)。緑茶を摂取しない群と比較した,緑茶の摂取量が「2~3杯/日」群と「4杯以上/日」群の多変量調整ハザード比は,それぞれ,CVDで0.85(95%信頼区間0.78-0.93),0.84(0.77-0.92),全脳卒中で0.86(0.78-0.95) ,0.80(0.73-0.89),脳梗塞で0.88(0.77-1.01),0.86(0.76-0.98),脳出血で0.77(0.63-0.92),0.65(0.54-0.78)であった。 CHDについては緑茶摂取量との関連はみとめられなかった。
◇ コーヒーの摂取量とCVD
コーヒーの摂取量が多いほど,CVD,全脳卒中,脳梗塞の発症リスクは有意に低下した(それぞれP for trend<0.004,P for trend<0.001,P for trend<0.001)。コーヒーを摂取しない群と比較した,コーヒーの摂取量が「3~6回/週」「1杯/日」「2杯以上/日」多変量調整ハザード比はそれぞれ,CVDで0.89(0.81-0.98),0.84(0.76-0.92),0.89(0.80-0.99),全脳卒中で0.89(0.80-0.99),0.80(0.72-0.90),0.81(0.72-0.91),脳梗塞で0.83(0.72-0.96),0.78(0.68-0.90),0.80(0.68-0.94)であった。 脳出血に関しては,「3~6回/週」よりも摂取量の多い群では年齢・性別調整後に発症リスクの有意な低下がみられたが,多変量調整を行うと関連は弱まった。
◇ 緑茶とコーヒー摂取量の相互作用
緑茶,コーヒーいずれも摂取しない群と比較すると,緑茶あるいはコーヒーの摂取の多い(緑茶2杯以上/日またはコーヒー1杯以上/日)群では,CVD,全脳卒中,脳梗塞,脳出血のリスクがいずれも有意に低下していた。とくに脳出血については緑茶摂取量とコーヒー摂取量の有意な相互作用がみとめられた(P for interaction<0.04)。この結果は男女同等であった。CHDでは有意な関連はみとめられなかった。
◇ 結論
日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究により,緑茶とコーヒー摂取量の相互作用とCVDおよび脳卒中の病型別発症リスク(とくに脳出血単独)との関連を初めて検討した。その結果,緑茶もしくはコーヒーの摂取量が多いほど,CVDおよび脳卒中各病型の発症リスクが低下することが示された。