[2017年文献] 中等度以上の身体活動量は心血管疾患発症リスクと負に関連する
欧米でのメタ解析より,中程度の運動は脳卒中発症リスクと負に関連することが報告されている。日本人では冠動脈疾患(CHD)と比べて,脳卒中発症が多いことから,日本人一般住民を対象とした大規模コホート研究において,余暇の運動だけでなく,仕事や家事の際の活動量を含めた総合的な身体活動量と,心血管疾患(CVD)発症リスク・脳卒中発症リスク・CHD発症リスクとの関連を調べた。身体活動量とCVD発症リスクとの関連をスプライン曲線で示した結果,1日の身体活動量が5~10 METs時間/日の人では,CVD発症リスク・脳卒中発症リスクがもっとも低く,約30%の低下と関連していた。さらに10 METs時間/日以上の人も,CVD発症リスク・脳卒中発症リスクの有意な低下は維持されていた。中高年における日常的な運動は,CVD発症リスクの低下と関連する可能性が示唆された。
Kubota Y, et al.; JPHC Study Group (Japan Public Health Center). Daily Total Physical Activity and Incident Cardiovascular Disease in Japanese Men and Women: Japan Public Health Center-Based Prospective Study. Circulation. 2017; 135: 1471-1473.
- コホート
- 対象9保健所(発症データのない東京および大阪を除外)の管轄行政区内に居住し,ベースライン時(2000~2003年)に,健診と同時に行われた自己記入式質問票による調査に回答した50~79歳の男女のうち,心血管疾患または癌の既往のある人,データに欠陥のある人を除いた74913人(男性34875人,女性40038人)を,2012年まで追跡(69万8946人・年)。
ベースライン時の自己記入式質問票により,体を動かす時間(通勤・通学や家事も含む),余暇の運動時間,睡眠時間についてたずね,身体活動量(単位: METs時間)を算出した。 - 結 果
- 追跡期間中に心血管疾患(CVD)を発症した人は以下のとおり。
CVD: 3345人
脳卒中: 2738人
冠動脈疾患(CHD): 607人
身体活動量とCVD発症リスクの多変量調整†後ハザード比との関連をスプライン曲線で示すと,身体活動量が5~10 METs時間/日のところでCVD発症リスク・脳卒中発症リスクがもっとも低くなり,約30%の有意な低下がみとめられた。 10 METs時間/日以上の範囲でも,CVD発症リスク・脳卒中発症リスクの有意な低下は維持されていた(†年齢,性別,喫煙習慣,飲酒習慣,心血管疾患の既往,座位時間,地域で調整)。
CHD発症リスクは,身体活動量が25 METs時間/日のところでもっとも低くなった。
■ 結論
欧米でのメタ解析より,中程度の運動は脳卒中発症リスクと負に関連することが報告されている。日本人では冠動脈疾患(CHD)と比べて,脳卒中発症が多いことから,日本人一般住民を対象とした大規模コホート研究において,余暇の運動だけでなく,仕事や家事の際の活動量を含めた総合的な身体活動量と,心血管疾患(CVD)発症リスク・脳卒中発症リスク・CHD発症リスクとの関連を調べた。身体活動量とCVD発症リスクとの関連をスプライン曲線で示した結果,1日の身体活動量が5~10 METs時間/日の人では,CVD発症リスク・脳卒中発症リスクがもっとも低く,約30%の低下と関連していた。さらに10 METs時間/日以上の人も,CVD発症リスク・脳卒中発症リスクの有意な低下は維持されていた。中高年における日常的な運動は,CVD発症リスクの低下と関連する可能性が示唆された。