[2020年文献] 年齢別・性別でみても,長時間睡眠の人は死亡リスクが高い
短時間睡眠および長時間睡眠は,いずれも全死亡リスクと関連することが知られている。さらに日本人では,睡眠時間と死亡リスクとの関連に性差があることも報告されている。睡眠時間は加齢とともに短くなることが知られているが,睡眠時間と死亡リスクとの関連について,年齢階層別にみた研究はほとんどない。そこで,日本人を対象とした大規模コホート研究において,睡眠時間と死亡リスク(全死亡,心血管疾患死亡,癌死亡,その他の死亡)との関連を調べた。その結果,男女ともに,睡眠時間が8時間以上の人は,7時間の人に比して,全死亡リスクが有意に高かった。また,睡眠時間と死亡リスクとの関連について,性別・年齢別でみたところ,大きな違いはみられなかった。長時間睡眠と死亡リスクが関連するメカニズムの解明が必要である。
Svensson T, et al. The association between habitual sleep duration and mortality according to sex and age: the Japan Public Health Center-based Prospective Study. J Epidemiol. 2020; doi: 10.2188/jea.JE20190210
- コホート
- 対象11保健所の管轄行政区内に居住し,初回調査(コホートI: 1990年,コホートII: 1993年)に参加した,40~59歳(コホートI)ならびに40~69歳(コホートII)の140420人のうち,ベースライン時の質問票に回答がない26843人,睡眠時間に関する情報がない3743人,癌・心血管疾患[CVD]・糖尿病の既往のある8721人,BMIの情報のない950人などを除外した99860人(男性46152人,女性53708人)を2014年12月31日(葛飾地区は2009年12月31日,吹田地区は2012年12月31日)まで追跡(男性19.9年,女性21.0年[平均])した。
日常的な睡眠時間について,「普段あなたは何時間睡眠をとりますか?」という質問により,対象者を6つのカテゴリーに分類した。
[C1]≦5時間,[C2]6時間,[C3]7時間(対照),[C4]8時間,[C5]9時間,[C6]≧10時間以上 - 結 果
- 睡眠時間は,男性7.4時間,女性7.1時間であった。追跡期間中の死亡は,男性11259人,女性6783人であった。
◇ 対象背景
睡眠時間のカテゴリーごとの対象背景は以下のとおり。男女ともに,睡眠時間が≧10時間の人は,年齢が高く,滅多にコーヒーを飲まない人,運動量が少ない人,自覚的ストレスが強くない人が多かった。
・男性
割合: [C1]3.5%,[C2]15.8%,[C3]33.1%,[C4]37.9%,[C5]6.6%,[C6]3.0%
年齢(歳): 51.1,50.2,50.0,51.6,53.9,55.9
コーヒーの摂取頻度
滅多に飲まない: 27.8%,24.1%,23.2%,30.7%,37.3%,40.9%
<1杯/日: 27.6%,26.2%,29.8%,30.4%,28.6%,27.9%
≧1杯/日: 43.5%,49.2%,46.1%,38.0%,33.0%,30.1%
BMI(kg/m2): 24.1,23.8,23.5,23.4,23.1,23.0(P<0.001)
単身世帯: 6.5%,5.0%,3.5%,2.7%,2.4%,3.3%(P<0.001)
健康診断受診: 80.3%,83.0%,83.2%,82.6%,82.8%,80.4%(P=0.034)
・女性
割合: [C1]5.1%,[C2]21.4%,[C3]38.4%,[C4]29.8%,[C5]3.9%,[C6]1.4%
年齢(歳): 51.6,50.2,50.4,52.8,55.7,56.6
コーヒーの摂取頻度
滅多に飲まない: 27.6%,24.4%,26.9%,34.5%,43.4%,48.7%
<1杯/日: 25.9%,27.8%,29.5%,29.9%,28.6%,23.1%
≧1杯/日: 45.8%,47.1%,43.0%,34.6%,26.7%,26.7%
BMI(kg/m2): 23.7,23.3,23.2,23.4,23.7,23.9(P<0.001)
単身世帯: 6.2%,4.4%,3.9%,5.0%,5.5%,8.2%(P<0.001)
健康診断受診: 78.8%,80.2%,82.3%,84.5%,87.0%,85.3%(P<0.001)
◇睡眠時間と死因別死亡リスクとの関連
睡眠時間のカテゴリーごとにみた,全死亡の多変量調整†ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおり。男性では,睡眠時間が7時間の人に比して,≧10時間の人の全死亡リスクが高かった。また,女性では,7時間の人に比して,8時間の人と≧10時間の人の全死亡リスクが高かった(†男性: 地域,飲酒,緑茶の摂取,単身世帯,健康診断受診,高血圧既往,自覚的ストレス,追跡開始から5年以内に死亡した人を除外して調整し層別解析,女性: 地域,飲酒,喫煙,単身世帯,健康診断,身体活動,高血圧既往,自覚的ストレス,追跡開始から5年以内に死亡した人を除外して調整し層別解析)。*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001
・全死亡
男性: [C1]1.25(0.85-1.85),[C2]0.99(0.79-1.23),[C3]1,[C4]1.06(0.91-1.25),[C5]1.09(0.84-1.40),[C6]1.60(1.14-2.25)**
女性: 0.91(0.70-1.19),0.95(0.81-1.10),1,1.21(1.06-1.37)**,1.19(0.93-1.52),1.60(1.09-2.34)*
・CVD死亡
男性: 1.46(0.46-4.62),1.54(0.80-3.00),1,1.14(0.72-1.81),1.45(0.69-3.02),2.39(0.91-6.25)
女性: 0.83(0.41-1.66),0.91(0.59-1.41),1,1.31(0.92-1.86),1.74(0.95-3.19),2.11(0.71-6.23)
・癌死亡
男性: 1.32(0.71-2.47),0.83(0.61-1.14),1,0.97(0.76-1.25),1.14(0.78-1.66),0.91(0.52-1.58)
女性: 0.91(0.62-1.35),0.99(0.79-1.24),1,1.10(0.91-1.34),0.85(0.55-1.31),1.58(0.85-2.94)
・その他の死亡
男性: 1.17(0.66-2.09),1.09(0.76-1.55),1,1.13(0.89-1.44),0.90(0.60-1.35),2.27(1.36-3.80)**
女性: 0.93(0.60-1.45),0.91(0.72-1.16),1,1.25(1.02-1.52)*,1.30(0.90-1.86),1.64(0.95-2.84)
◇年齢別でみた睡眠時間と死因別死亡リスクとの関連
年齢別(≦50歳または>50歳)でみた,睡眠時間のカテゴリーごとの,全死亡の多変量調整‡ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおり。50歳以下の男性では,対照に比してC1,C5,C6の死亡リスクが高く,50歳超の男性では,対照に比してC1,C4,C5,C6の死亡リスクが高く,C1,C6はCVD死亡リスクが高かった。また,50歳以下の女性では,対照に比してC4,C5,C6の死亡リスクが高く,50歳超の女性では,対照に比してC4,C5,C6の死亡リスクが高く,C4,C5はCVD死亡リスクが高かった(‡†の項目から年齢を除外)。
・全死亡
≦50歳(男性): [C1]1.59(1.21-2.09)***,[C2]1.00(0.85-1.18),[C3]1,[C4]1.11(0.98-1.26),[C5]1.26(1.00-1.59)*,[C6]1.95(1.41-2.72)***
>50歳(男性): 1.41(1.15-1.72)***,1.08(0.96-1.21),1,1.17(1.07-1.27)***,1.21(1.06-1.38)**,1.61(1.38-1.87)***
≦50歳(女性): 1.24(0.91-1.67),1.08(0.91-1.28),1,1.33(1.14-1.56)***,1.77(1.23-2.54)**,2.29(1.31-4.02)**
>50歳(女性): 1.10(0.93-1.30),1.00(0.90-1.10),1,1.20(1.11-1.30)***,1.35(1.18-1.55)***,1.66(1.36-2.02)***
・CVD死亡
≦50歳(男性): 1.65(0.85-3.19),0.87(0.56-1.34),1,0.94(0.67-1.33),1.17(0.64-2.13),1.68(0.70-4.03)
>50歳(男性): 1.66(1.02-2.69)*,1.28(0.96-1.72),1,1.04(0.84-1.29),1.06(0.75-1.49),2.04(1.39-2.99)***
≦50歳(女性): 0.59(0.22-1.62),1.03(0.59-1.77),1,1.56(0.96-2.53),1.95(0.66-5.71),3.66(0.68-19.63)
>50歳(女性): 1.47(0.99-2.19),1.13(0.87-1.47),1,1.37(1.11-1.69)**,2.11(1.54-2.90)***,0.94(0.53-1.68)
◇ 結論
短時間睡眠および長時間睡眠は,いずれも全死亡リスクと関連することが知られている。さらに日本人では,睡眠時間と死亡リスクとの関連に性差があることも報告されている。睡眠時間は加齢とともに短くなることが知られているが,睡眠時間と死亡リスクとの関連について,年齢階層別にみた研究はほとんどない。そこで,日本人を対象とした大規模コホート研究において,睡眠時間と死亡リスク(全死亡,心血管疾患死亡,癌死亡,その他の死亡)との関連を調べた。その結果,男女ともに,睡眠時間が8時間以上の人は,7時間の人に比して,全死亡リスクが有意に高かった。また,睡眠時間と死亡リスクとの関連について,性別・年齢別でみたところ,大きな違いはみられなかった。長時間睡眠と死亡リスクが関連するメカニズムの解明が必要である。