[2004年文献] 塩分摂取の抑制に対する意識が低い人では,尿中塩分排泄量が多い。
塩分摂取抑制に関する意識・行動段階と尿中塩分排泄が関連しているかどうかについて,職域コホートにおける生活習慣介入研究のベースラインデータを用いた検討を行った。その結果,男性,および非肥満の女性において,塩分摂取抑制に対する意識の違いにより,尿中塩分排泄が有意に異なることがわかった。この結果は,食事に関する介入を行うにあたっての段階別モデルの妥当性を裏付けるものである。
Tamaki J, et al.; HIPOP-OHP Research Group. Stages of change for salt intake and urinary salt excretion: baseline results from the High-Risk and Population Strategy for Occupational Health Promotion (HIPOP-OHP) study. Hypertens Res. 2004; 27: 157-66.
- コホート
- 国内の12の事業所のいずれかに勤務し,1999~2000年にベースライン健診を受けた7226人のうち,調査票への回答に不備や不足がなかった6816人(男性5410人,女性1406人,回答率94.3 %)。
平均年齢は38.6歳。
自己記入式質問票により食塩の摂取状況および減塩に対する意識・行動段階を調査した。その結果より,対象者を以下の5段階に分類した。
関心なし: 少なくとも6か月以内に生活習慣を改善しようとは思っていない人
考え中: 6か月以内に生活習慣を改善しようと思っている人
準備: 1か月以内に生活習慣を改善しようと思っている人
実行: すでに生活習慣を改善しているが,その期間が6か月未満の人
維持: すでに生活習慣を改善しており,その期間が6か月以上の人 - 結 果
- 高血圧(140 / 90 mmHg以上)は12.8 %の人に見られた。降圧薬服用率は3.1 %。
肥満(BMI 25 kg/m2以上)は21.3 %の人に見られた(男性23.5 %,女性13.2 %)。
生活習慣の改善に関する意識・行動段階の比率は以下のとおり。
関心なし: 65.2 %
考え中: 5.9 %
準備: 13.7 %
実行: 1.3 %
維持: 13.9 %
段階ごとの比率は男女で有意に異なっており,女性のほうが健康に対する意識が高い人が多かった(P<0.05)。
男性では,年齢(40歳未満/40歳以上)に関わらず,「準備」の人の収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)は,「関心なし/考え中」の人よりも有意に高かった(P<0.05)。40歳以上の女性では,「準備」の人のSBPおよびDBPは,「関心なし/考え中」の人よりも有意に高かった(P<0.05)。
男性では,「実行/維持」の人の尿中塩分排泄は,「準備」および「関心なし/考え中」の人よりも有意に低かった(P<0.05)。女性では,段階による有意な差はなかった。
多重回帰分析によると,男性では,「実行/維持」の人に対し,「関心なし/考え中」の人の尿中塩分排泄は有意に高かった(群間差0.3g/日,P<0.05)。
女性では段階による有意差はみられなかったため,肥満および非肥満の女性にわけて検討した。その結果,肥満の女性(176人)では段階による有意な差はみられなかった。
一方,非肥満の女性(1222人)では,「実行/維持」の人に対し,「関心なし/考え中」の人の尿中塩分排泄は有意に高かった(群間差0.6 g/日,P<0.05)。
◇ 結論
塩分摂取抑制に関する意識・行動段階と尿中塩分排泄が関連しているかどうかについて,職域コホートにおける生活習慣介入研究のベースラインデータを用いた検討を行った。その結果,男性,および非肥満の女性において,塩分摂取抑制に対する意識の違いにより,尿中塩分排泄が有意に異なることがわかった。この結果は,食事に関する介入を行うにあたっての段階別モデルの妥当性を裏付けるものである。