[2007年文献] 寝つきの悪さは,糖尿病リスクおよびQOLの低さと関連する

健康な日本人の事業所勤務者を対象とした前向きコホート研究において,睡眠時間および睡眠の質と,糖尿病発症リスクとの関連を検討した。4.1年間の追跡の結果,寝つきの悪さは糖尿病の発症リスクと有意に関連していることが示された。また寝つきの悪さ,および眠りの浅さはQOLの低さにも有意に関連していた。

Hayashino Y, et al.; HIPOP-OHP Research group. Relation between sleep quality and quantity, quality of life, and risk of developing diabetes in healthy workers in Japan: the High-risk and Population Strategy for Occupational Health Promotion (HIPOP-OHP) Study. BMC Public Health. 2007; 7: 129.pubmed

コホート
国内の12の事業所のいずれかに勤務する19~69歳の7226人のうち,糖尿病既往がある,または睡眠時間や睡眠の質に関するデータが不足していた717人を除いた6509人を1999~2004年にかけて4.2年間(中央値)追跡。
平均年齢は38.2歳。

睡眠時間や睡眠の質について,自己記入式質問票により以下の項目を調査した。
  ・ 平日の平均睡眠時間(6時間未満/6時間以上~7時間未満/7時間以上~8時間未満/8時間以上)
  ・ 寝つきが悪いと感じることはあるか(たびたび/ときどき/まったくない)
  ・ 眠りが浅いと感じることはあるか(たびたび/ときどき/まったくない)
また,生活の質(quality of life, QOL)についてはSF-36(MOS Short-Form 36-Item Health Survey)調査票を用いて評価を行った。この調査票には8種類の尺度が設けられているが,この研究ではそのうち事業所勤務者で観察可能な「活力」,「心の健康」,「日常役割機能(身体)」,「日常役割機能(感情)」,「全体的健康感」の5つのみを用い,それぞれについて0~100のスコアを算出した。5つの尺度のすべてについて,全体の中央値よりも低いスコアを示した場合,「QOLが低い」と判断した。

追跡期間中の糖尿病の発症の有無は,自己申告,および以下の基準により判断した: (1) 空腹時血糖 126 mg/dL以上,(2) 随時血糖200 mg/dL以上,(3) 血糖降下薬服用。
結果
ベースライン時の平均BMIは22.6 kg/m2
寝つきが悪いと感じることが「まったくない」の人は61.3 %,「ときどき」の人は30.7 %,「たびたび」の人は8.0 %だった。
寝つきの悪さは,糖尿病家族歴,高血圧既往,飲酒量と相関傾向を示し,運動および喫煙とは逆相関傾向を示した。

糖尿病を発症したのは230人。
寝つきの悪さは,糖尿病発症リスクと有意に相関した(P=0.007)。この有意性は,年齢,性別,BMIなどで補正したのちも変わらなかった。各群における補正後の糖尿病発症ハザード比(95 %信頼区間)は以下のとおり。
   「まったくない」 1.00
   「ときどき」 1.42(1.05-1.91)
   「たびたび」 1.61(1.00-2.58)
睡眠時間,および眠りの浅さと糖尿病発症リスクでは有意な関連は見られなかった。

SF-36により生活の質(quality of life, QOL)の評価を行った結果,寝つきの悪さ,および眠りの浅さは,5つの領域のスコア(活力,心の健康,日常役割機能(身体),日常役割機能(感情),全体的健康感)のいずれとも有意に逆相関していた(P<0.001)。

◇ 結論
健康な日本人の事業所勤務者を対象とした前向きコホート研究において,睡眠時間および睡眠の質と,糖尿病発症リスクとの関連を検討した。4.1年間の追跡の結果,寝つきの悪さは糖尿病の発症リスクと有意に関連していることが示された。また寝つきの悪さ,および眠りの浅さはQOLの低さにも有意に関連していた。


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