[2001年文献] 抑うつ症状は脳卒中および脳梗塞リスクと有意に関連する

抑うつ症状と脳卒中リスクとの関連を検討するため,一般住民を対象とした10.3年間の追跡研究を行った。その結果,抑うつ症状は脳卒中リスクおよび脳梗塞リスクと有意に関連し,SDSスコアが35以上の人では,30以下の人に比べて脳卒中リスクが約2倍となることが示された。この結果から,抑うつ症状の評価により脳卒中リスクを予測できる可能性が示唆される。

Ohira T, et al. Prospective study of depressive symptoms and risk of stroke among japanese. Stroke. 2001; 32: 903-8.pubmed

コホート
協和コホート。
茨城県筑西市協和地区に住む40~78歳の男女901人のうち,脳卒中既往のある14人,冠動脈疾患既往のある8人を除いた879人(男性311人,女性568人)を,1985年から1996年まで平均10.3年間にわたり追跡。

脳卒中の病型診断のために,脳卒中発症者の90 %以上にCTスキャンを実施。脳卒中に一過性脳虚血は含めなかった。

抑うつ症状の診断には,ツァンの自己評価式抑うつ性尺度(Zung Self-Rating Depression Scale: SDS)を用いた。20項目に1~4のスコアをつけ,その合計(最低20,最高80)が40以上の場合に軽度の抑うつ症状があると定義した。
また,SDSスコアにより全体を以下のように三分位に分けて検討を行った。
   低値: 30以下,中値: 31~34,高値: 35以上
高血圧の定義は,160 / 95 mmHg以上または降圧薬服用とした。
結 果
脳卒中を発症したのは69人。
うち脳梗塞が39人,脳出血が20人(脳内出血10人,くも膜下出血10人),病型不明が10人だった。

脳卒中を発症した人における軽度の抑うつ(SDSスコア≧40)の割合は,非発症者の2倍と高くなっていた。
総コレステロール,飲酒,喫煙といった心血管疾患危険因子はいずれもSDSとの有意な関連を示さなかったが,収縮期血圧,拡張期血圧およびBMIは,それぞれSDSスコアとの弱い逆相関を示した。

◇ 抑うつ症状と脳卒中リスク
SDSスコア三分位ごとの多変量調整後脳卒中発症リスク(95 %信頼区間)は以下のとおりで,SDSスコアが高いほど全脳卒中および脳梗塞リスクが高かったが,脳出血については有意差はみとめられなかった。
・ 全脳卒中
   SDS低値: 1.0
   SDS中値: 1.2(0.6-2.2)
   SDS高値: 1.9(1.1-3.5)
・ 脳梗塞
   SDS低値: 1.0
   SDS中値: 1.1(0.4-2.7)
   SDS高値: 2.7(1.2-6.0)
・ 脳出血
   SDS低値: 1.0
   SDS中値: 1.7(0.6-4.8)
   SDS高値: 0.9(0.3-3.1)

SDS高値群をさらにスコア35~39のグループと40以上のグループに分けた解析を行った結果は以下のとおりで,スコア≧40の人において,スコア低値に対する顕著なリスク上昇がみとめられた。
・ 全脳卒中
   SDS 35~39: 相対危険度1.1(95 %信頼区間: 0.5-2.3)
   SDS 40以上: 3.5(1.8-6.9)
・ 脳梗塞
   SDS 35~39: 1.4(0.5-3.7)
   SDS 40以上: 6.4(2.5-16.1)


◇ 結論
抑うつ症状と脳卒中リスクとの関連を検討するため,一般住民を対象とした10.3年間の追跡研究を行った。その結果,抑うつ症状は脳卒中リスクおよび脳梗塞リスクと有意に関連し,SDSスコアが35以上の人では,30以下の人に比べて脳卒中リスクが約2倍となることが示された。この結果から,抑うつ症状の評価により脳卒中リスクを予測できる可能性が示唆される。


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