[2003年文献] 高血圧+喫煙本数>20本/日で脳卒中,冠動脈疾患リスクが上昇
日本の都市部および農村部の3地域の中年男性を対象としたコホート研究において,喫煙は脳卒中,虚血性脳卒中,および冠動脈疾患リスクを上昇させ,その傾向は高血圧患者で著しいとの仮説を検証した。その結果,喫煙本数>20本/日の日本人男性では全脳卒中,虚血性脳卒中,および冠動脈疾患のリスクが上昇し,そのリスクはとくに高血圧のある人で顕著であった。本研究により,禁煙することで全脳卒中リスクが減少する可能性が示唆された。
Yamagishi K, et al. Smoking raises the risk of total and ischemic strokes in hypertensive men. Hypertens Res. 2003; 26: 209-17.
- コホート
- 井川町(1975~1980年),協和町(1981~1986年),および八尾市(1975~1984年)の40~69歳の男性住民3754人のうち,喫煙状況の回答を得られなかった7人,脳卒中かつ/または冠動脈疾患の既往をもつ121人を除いた3626人を解析。
追跡期間は平均14.3年。
参加率は63%。
ベースライン時の喫煙状況により,全体を以下4つのカテゴリーにわけて解析した。
喫煙未経験者(531人)
禁煙者(599人)
喫煙本数≦20本/日(951人)
喫煙本数>20本/日(1545人) - 結 果
- ◇ 対象背景
平均年齢は,未経験者52歳,禁煙者54歳***,20本以下の人53歳**,20本超の人52歳であった。
未経験者にくらべて,平均収縮期血圧**および高血圧罹患率*は20本超の人で高かった。コレステロール平均値は禁煙者*で高く,20本超の人*で低かった。平均BMIは喫煙者***で低かった。心房細動*およびST-T変化は禁煙者*で高く,高血圧かつ/または動脈硬化性変化を有する人は禁煙者***および20本以下の人**で少なかった。アルコール摂取量は喫煙者(20本以下の人**,20本超の人***)で多く,禁酒者の割合は禁煙者*で高く,20本超の人**で低かった。
*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001(いずれも vs. 未経験者)
全脳卒中発症数は257人で,うち脳内出血は50人,くも膜下出血は25人,虚血性脳卒中は173人,分類不能の脳卒中は9人であった。
冠動脈疾患発症数は100人で,うち心筋梗塞は64人,労作性狭心症は24人,心臓突然死は12人であった。
◇喫煙状況と脳卒中
喫煙状況(未経験,禁煙,20本以下,20本超)と脳卒中(全脳卒中および脳卒中の各病型)との関連を多変量解析にて評価した結果,20本超との有意な関連が認められたのは全脳卒中と虚血性脳卒中のみであった。
それぞれの相対リスク(RR)は以下のとおり。
全脳卒中
未経験者:1.0(対照)
禁煙者:0.8(95%信頼区間[CI]0.5~1.3)
20本以下:1.1(0.7~1.7)
20本超:1.6(1.1~2.4)
虚血性脳卒中
未経験者:1.0
禁煙者:0.8(0.4~1.6)
20本以下:1.2(0.7~2.1)
20本超:1.6(1.0~2.5)
◇喫煙状況と冠動脈疾患
多変量解析にて,喫煙状況と冠動脈疾患との関連を多変量解析にて評価した結果,20本超と冠動脈疾患との有意な関連が認められた。
それぞれのRRは以下のとおり。
冠動脈疾患
未経験者:1.0
禁煙者:3.7(95%CI 1.2~11.2)
20本以下:4.1(1.4~11.8)
20本超:4.6(1.6~12.9)
◇高血圧と喫煙状況と脳卒中
多変量解析にて,高血圧の有無により,全脳卒中および虚血性脳卒中と喫煙状況との関連を評価した結果,高血圧+喫煙本数>20本/日の人と全脳卒中および虚血性脳卒中との有意な関連が認められた。
それぞれのRRは以下のとおり。
全脳卒中
非高血圧者
未経験者:1.0
禁煙者:0.5(95%CI 0.3~1.1)
20本以下:0.7(0.4~1.3)
20本超:1.2(0.7~2.0)
高血圧者
未経験者:1.0
禁煙者:1.2(0.5~2.8)
20本以下:1.6(0.8~3.2)
20本超:2.3(1.2~4.4)
虚血性脳卒中
非高血圧者
未経験者:1.0
禁煙者:0.5(0.2~1.2)
20本以下:0.7(0.4~1.5)
20本超:1.3(0.7~2.4)
高血圧者
未経験者:1.0
禁煙者:1.4(0.5~3.7)
20本以下:1.9(0.8~4.3)
20本超:2.2(1.0~5.0)
◇ 結論
日本の都市部および農村部の3地域の中年男性を対象としたコホート研究において,喫煙は脳卒中,虚血性脳卒中,および冠動脈疾患リスクを上昇させ,その傾向は高血圧患者で著しいとの仮説を検証した。その結果,喫煙本数>20本/日の日本人男性では全脳卒中,虚血性脳卒中,および冠動脈疾患のリスクが上昇し,そのリスクはとくに高血圧のある人で顕著であった。本研究により,禁煙することで全脳卒中リスクが減少する可能性が示唆された。