[2006年文献] 血中フィブリノーゲン高値は脳内出血の危険因子

血中フィブリノーゲン濃度と脳卒中および脳卒中の各病型のリスクの関連について検討するため,日本の4つの地域の住民を対象とした11.2年間の追跡研究を行った。その結果,年齢・性別・喫煙の有無にかかわらず,血中フィブリノーゲン値は出血性脳卒中(とくに脳内出血)リスクと有意に関連することが示された。

Sato S, et al. Plasma fibrinogen concentrations and risk of stroke and its subtypes among Japanese men and women. Stroke. 2006; 37: 2488-92.pubmed

コホート
1989~1996年に循環器健診を受けた40~79歳の12,806人(秋田県井川町: 男性917人,女性1,173人; 茨城県筑西市協和地区: 1,584人,2,144人; 高知県野市町: 932人,1,501人; 大阪府八尾市南高安地区: 1,490人,3,065人)のうち,脳卒中または冠動脈疾患既往のある609人を除いた12,197人を,2003年まで平均11.2年間追跡(男性4,608人,女性7,589人)。

脳卒中,および各病型の診断にはCTまたはMRIを用いた。
血中フィブリノーゲン値により,以下のように全体を四分位に分けて解析を行った。
   第1群: 102~242 mg/dL(3019人)
   第2群: 243~274 mg/dL(3101人)
   第3群: 275~313 mg/dL(3019人)
   第4群: 314~824 mg/dL(3058人)
結 果
血中フィブリノーゲン値の平均は284.1 mg/dL(井川町277.3 mg/dL,筑西市協和地区289.1 mg/dL,野市町294.2 mg/dL,八尾市南高安地区277.9 mg/dL)。

出血性脳卒中の発症は103人(うち脳内出血が70人,くも膜下出血が33人),虚血性脳卒中の発症は206人,病型不明が8人。

血中フィブリノーゲン値がもっとも高い第4群で,第1群に比して有意に高い値を示していたのは,年齢,収縮期血圧,拡張期血圧,総コレステロール,BMI,喫煙率で,有意に低い値を示していたのは男性の割合,HDL-C。

◇ 血中フィブリノーゲン値と全脳卒中および脳卒中各病型のリスク
血中フィブリノーゲン値がもっとも高い第4群では,第1群に比して出血性脳卒中のリスクが2倍以上,とくに脳内出血のリスクが3倍以上と有意に高いことが示された。
全脳卒中,くも膜下出血,虚血性脳卒中では有意なリスク上昇はみとめられなかった。
四分位ごとの全脳卒中および出血性脳卒中のハザード比(年齢,性別,部位および既知の心血管危険因子による多変量調整後)は以下のとおり。それぞれ第1群(対照),第2群,第3群,第4群の値(95 %信頼区間)。
   全脳卒中: 1.0,1.0(0.7-1.4),0.9(0.7-1.3),1.0(0.7-1.4)
   出血性脳卒中: 1.0,2.1(1.0-4.3),1.7(0.8-3.5),2.5(1.3-5.0)
     脳内出血: 1.0,2.1(0.9-5.1),2.0(0.8-4.9),3.2(1.4-7.4)

血中フィブリノーゲン値と全脳卒中および脳卒中各病型リスクとの関連について,年齢,性別,喫煙の有無によるサブグループごとの検討を行った結果,いずれも有意な相互関係はみとめられなかった。

◇ 結論
血中フィブリノーゲン濃度と脳卒中および脳卒中の各病型のリスクの関連について検討するため,日本の4つの地域の住民を対象とした11.2年間の追跡研究を行った。その結果,年齢・性別・喫煙の有無にかかわらず,血中フィブリノーゲン値は出血性脳卒中(とくに脳内出血)リスクと有意に関連することが示された。


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