[2010年文献] 夜間の間欠的低酸素血症はメタボリックシンドロームと関連

閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は,近年,心血管疾患の危険因子として注目されており,メタボリックシンドローム(MetS)との関連も指摘されている。しかし,これまでのOSAの研究は過体重や肥満の人をおもな対象としているため,これらの結果が肥満の少ない集団にも当てはまるかどうかは明らかではない。そこで,肥満の少ない日本人一般住民において,OSAのサロゲートマーカーである夜間の間欠的低酸素血症とMetSとの関連を検討した。その結果,夜間の間欠的低酸素血症はMetSおよびMetS構成因子の重積と関連しており,これらの結果はとくに非肥満者で顕著であった。

Muraki I, et al. Nocturnal Intermittent Hypoxia and Metabolic Syndrome; the Effect of being Overweight: the CIRCS Study. J Atheroscler Thromb. 2010; pubmed

コホート
2001~2005年に循環器健診および睡眠に関する調査に参加した,閉塞性睡眠時無呼吸の診断の既往のない40~69歳の住民(大阪府八尾市:男性448人,女性853人;秋田県南秋田郡井川町:397人,571人;茨城県筑西市協和地区:917人,1507人)のうち,脳卒中の既往のある55人,冠動脈疾患の既往のある33人を除いた男性1710人,女性2896人(断面解析)。

・ 夜間の間欠的低酸素血症(nocturnal intermittent hypoxia)の判定
パルスオキシメーターを用い,対象者の自宅にて就寝中の酸素飽和度低下指数(oxygen desaturation index: ODI)を各自測定してもらい,3%以上のODI低下(3%ODI)が1時間あたり何回みられたかに基づき,性別ごとに以下の3つのカテゴリーに分けて解析した。
  • 間欠的低酸素血症なし(3%ODIが5回未満/時間): 男性1031人,女性2358人
  • 軽度の間欠的低酸素血症(5回以上15回未満/時間): 男性527人,女性473人
  • 中等度~重度の間欠的低酸素血症(15回以上/時間): 男性152人,女性65人

メタボリックシンドローム(MetS)の診断には改変NCEP-ATP III基準を用い,以下のMetS構成因子を3つ以上もつ場合にMetSと診断した。
  • 肥満: BMI≧25 kg/m2
  • 血糖高値: 空腹時血糖値≧110 mg/dL,非空腹時血糖値≧140 mg/dL,または治療中
  • 血圧高値: 血圧≧130 / 85 mmHg,または降圧薬服用
  • 低HDL-C血症: HDL-C値<40 mg/dL未満(男性),<50 mg/dL(女性)
  • 高トリグリセリド血症: トリグリセリド値≧150 mg/dL
結 果
◇ 患者背景
3つの地域における軽度および中等度~重度の夜間の間欠的低酸素血症の割合は,男性でそれぞれ29~35%,8~9%で,女性では15~17%,2~3%であった。

間欠的低酸素血症のカテゴリーごとに背景を比較した結果,男女ともに,3%以上の酸素飽和度低下指数(ODI)低下(3%ODI)の回数が多いほど平均年齢,BMI,収縮期血圧,拡張期血圧,血糖値,トリグリセリド値,および降圧薬服用率が高く,HDL-C値が低かった。男性では,飲酒量および喫煙率が3%ODIと正の関連を示した。総コレステロール値は,男性では3%ODIと正の関連を,女性では負の関連を示した。

◇ 夜間の間欠的低酸素血症とMetSリスク
夜間の間欠的低酸素血症のない人にくらべ,軽度および中等度~重度の夜間の間欠的低酸素血症の人では,MetSリスクが有意に高かった。
間欠的低酸素血症のカテゴリーごとのMetSの多変量調整オッズ比(95%信頼区間)は以下のとおりで,中等度~重度の間欠的低酸素血症と性別のあいだに有意な相互作用がみられた(P for interaction=0.04)。

・ 男性
   なし: 1.0(対照)
   軽度:1.9(1.6-2.4)
   中等度~重度:3.2(2.2-4.7)
・ 女性
   なし:1.0(対照)
   軽度:2.6(2.1-3.4)
   中等度~重度:5.8(3.4-9.8)

◇ 夜間の間欠的低酸素血症とMetS構成因子の重積リスク
肥満(BMI≧25 kg/m2),非肥満をとわず,中等度~重度の夜間の間欠的低酸素血症はMetS構成因子2つ以上の重積リスクに関連しており,とくに非肥満者で有意な関連がみられた。

間欠的低酸素血症のカテゴリーごとにみたMetS構成因子2つ以上の重積の多変量調整オッズ比(95%信頼区間)は以下のとおりで,中等度~重度の間欠的低酸素血症とBMIのあいだに有意な相互作用がみられた(P for interaction=0.002)。

・ 非肥満
   なし:1.0(対照)
   軽度:1.1(0.9-1.4)
   中等度~重度:1.9(1.2-3.1)
・ 肥満
   なし:1.0(対照)
   軽度:1.2(0.9-1.5)
   中等度~重度:1.4(0.9-2.1)

◇ 結論
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は,近年,心血管疾患の危険因子として注目されており,メタボリックシンドローム(MetS)との関連も指摘されている。しかし,これまでのOSAの研究は過体重や肥満の人をおもな対象としているため,これらの結果が肥満の少ない集団にも当てはまるかどうかは明らかではない。そこで,肥満の少ない日本人一般住民において,OSAのサロゲートマーカーである夜間の間欠的低酸素血症とMetSとの関連を検討した。その結果,夜間の間欠的低酸素血症はMetSおよびMetS構成因子の重積と関連しており,これらの結果はとくに非肥満者で顕著であった。


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