[2014年文献] 高感度CRP高値は,脳卒中既往を伴う認知症のリスクと関連する
高感度(hs)CRPと,介護を要する認知症リスクとの関連について,コホート内症例対照研究による検討を行った。その結果,脳卒中既往のある認知症について,他の危険因子とは独立に,hsCRP値が高いほどリスクが高くなる有意な関連がみとめられた。
Chei CL, et al.; CIRCS Investigators. C-reactive protein levels and risk of disabling dementia with and without stroke in Japanese: The Circulatory Risk in Communities Study (CIRCS). Atherosclerosis. 2014; 236: 438-443.
- コホート
- 茨城県筑西市協和地区(1984~1994年)および秋田県井川町(1989~1995年)で循環器リスク健診を受けた40~69歳の7531人を,協和地区では2005年,井川町では2013年まで平均14年間追跡(コホート内症例対照研究)。
協和地区では1999~2005年,井川町では1999~2013年の期間における認知症の状況により,発症者とそれに対応する対照者の2群を以下のとおり設定した。
[認知症発症者]介護を要する認知症(「認知症高齢者の日常生活自立度」II以上)と認定された65歳以上の275人。
[対照]認知症発症者と性別,年齢(±2歳),地域が一致する認知症のない550人(症例1人につき対照2人)。
高感度CRP値(mg/dL)の四分位により,対象者を以下のカテゴリーに分けた。
Q1: 0.002~0.016(中央値0.01),Q2: 0.017~0.041(0.03),Q3: 0.042~0.088(0.06),Q4: 0.090~3.11(0.152) - 結 果
- ◇ 対象背景
おもな対象背景(認知症発症者 vs. 対照者,*P<0.05)は,年齢62.8 vs. 62.6歳,収縮期血圧137.2 vs. 132.7 mmHg*,拡張期血圧79.9 vs. 78.1 mmHg*,降圧薬服用率32.4% vs. 30.9%,BMI 23.9 vs. 23.9 kg/m2,1日のエタノール摂取量0.48 vs. 0.43 g,喫煙率23.3% vs. 19.1%,総コレステロール200.1 vs. 198.2 mg/dL,耐糖能異常16.7% vs. 15.6%,糖尿病10.2% vs. 5.3%*,心房細動0.4% vs. 0.4%,高感度(hs)CRP中央値0.041 vs. 0.042 mg/dL。
発症者275人のうち,脳卒中の既往ありが96人,なしが179人であった。
脳卒中既往の有無ごとにみると,脳卒中既往のある認知症発症者では,その対照者にくらべて収縮期血圧,拡張期血圧,糖尿病の割合およびhsCRPの中央値が有意に高かった(P<0.05)。
◇ hsCRPと認知症リスク
hsCRPのカテゴリーごとの認知症発症の多変量調整オッズ比†(95%信頼区間)は以下のとおりで(*P<0.05 vs. Q1),脳卒中既往ありの認知症について,hsCRP値が高いほどリスクが増加する有意な傾向がみとめられたが,脳卒中既往なしの認知症については,関連はみられなかった。
(†年齢,性別,地域,収縮期血圧,降圧薬服用,耐糖能異常,糖尿病,BMI,エタノール摂取量,喫煙,総コレステロール,血清保存年,採血時の空腹状況で調整)
・全認知症
Q1: 1.00,Q2: 1.34(0.86-2.07),Q3: 1.16(0.73-1.85),Q4: 0.99(0.61-1.60)[P for trend=0.82]
hsCRPの1 SD増加あたり: 1.02(0.87-1.20)
・脳卒中既往ありの認知症
1.00,2.15(0.90-5.15),2.06(0.82-5.21),2.72(1.12-6.64)*[P for trend=0.04]
hsCRPの1 SD増加あたり: 1.35(1.02-1.79)*
・脳卒中既往なしの認知症
1.00,1.08(0.64-1.84),0.93(0.54-1.62),0.63(0.34-1.14)[P for trend=0.11]
hsCRPの1 SD増加あたり: 0.89(0.72-1.10)
層別解析の結果,降圧薬服用,および糖尿病のいずれについても,hsCRPと認知症リスクとの関連に対する有意な相互作用はみとめられなかった(それぞれP for interaction=0.48,P for interaction=0.12)。
◇ 結論
高感度(hs)CRPと,介護を要する認知症リスクとの関連について,コホート内症例対照研究による検討を行った。その結果,脳卒中既往のある認知症について,他の危険因子とは独立に,hsCRP値が高いほどリスクが高くなる有意な関連がみとめられた。