[2017年文献] 1963~2013年の50年間で,血圧が低下する一方でBMIが増加

秋田県井川町の一般住民を対象とした前向きコホート研究のデータを用い,1963年から2013年にかけての50年間で,血圧ならびにBMIがどのように変化したかを長期的に検討した。その結果,全体的に,収縮期血圧は顕著な低下を示している一方で,BMIや,肥満をあわせもつ高血圧者の割合は経時的に増加していた。ただし2009~2013年においても,肥満のない高血圧者の数はほとんどの年齢層で肥満の高血圧者より多かったことから,肥満の高血圧者とともに肥満のない高血圧者も,依然として血圧コントロールの重要なターゲットであることが示唆された。

Hori M, et al.; CIRCS Investigators. Fifty-year Time Trends in Blood Pressures, Body Mass Index and their Relations in a Japanese Community: The Circulatory Risk in Communities Study (CIRCS). J Atheroscler Thromb. 2017; 24: 518-529.pubmed

コホート
1963年から2013年にかけて,秋田県井川町で以下の11の期間中に循環器健診を受診した当時40~79歳の一般住民(断面解析結果の経時的な比較)。
区分1: 1963~66年(1846人),区分2: 1972~75年(2101人),区分3: 1976~79年(1976人),区分4: 1980~83年(2144人),区分5: 1984~1987年(2366人),区分6: 1988~1991年(2194人),区分7: 1992~1995年(2083人),区分8: 1996~1999年(2123人),区分9: 2000~2003年(2036人),区分10: 2004~2008年(1889人),区分11: 2009~2013年(1776人)
結 果
■ 結果
◇ 収縮期血圧の推移
区分1から区分11にかけての収縮期血圧(mmHg)の推移は以下のとおりで,性・年齢層を問わず,有意な低下傾向がみとめられた。
この傾向は,降圧薬服用者,非服用者とも同様であった。

[男性]
 40~49歳: 142,139,134,132,133,134,133,131,132,130,126(P for trend<0.001)
 50~59歳: 150,145,141,138,139,138,138,135,138,130,129(P for trend<0.001)
 60~69歳: 160,156,149,143,141,145,140,139,139,134,132(P for trend<0.001)
 70~79歳: 168,161,156,150,146,148,143,144,142,138,133(P for trend<0.001)
[女性]
 40~49歳: 133,131,126,126,127,129,126,126,123,121,120(P for trend<0.001)
 50~59歳: 143,140,134,135,135,135,133,133,135,128,125(P for trend<0.001)
 60~69歳: 155,151,143,142,142,142,138,139,140,135,132(P for trend<0.001)
 70~79歳: 165,157,152,148,145,148,143,141,141,141,138(P for trend<0.001)

◇ 拡張期期血圧の推移
区分1から区分11にかけての拡張期血圧(mmHg)の推移は以下のとおりで,40~49歳の男性を除き,すべての性・年齢層で有意な低下傾向がみとめられた。
この傾向は,降圧薬服用者,非服用者ともほぼ同様だったが,40~49歳の女性では服用者の低下傾向が有意ではなかった。

[男性]
 40~49歳: 85,86,85,84,86,84,85,85,87,85,85(P for trend=0.65)
 50~59歳: 88,87,87,85,86,85,85,87,89,83,83(P for trend<0.001)
 60~69歳: 89,87,85,84,83,84,83,84,85,80,80(P for trend<0.001)
 70~79歳: 87,84,85,82,80,82,81,82,81,78,77(P for trend<0.001)
[女性]
 40~49歳: 80,80,78,77,79,79,79,79,81,76,76(P for trend=0.01)
 50~59歳: 84,84,81,81,82,81,82,82,84,78,77(P for trend<0.001)
 60~69歳: 86,85,83,81,82,81,81,82,83,78,78(P for trend<0.001)
 70~79歳: 88,83,82,80,80,78,78,78,79,75,75(P for trend<0.001)

◇ 降圧薬服用率の推移
区分1から区分11にかけての降圧薬服用率(非高血圧も含む全対象者のなかの降圧薬服用者の割合)の推移は以下のとおりで,男女とも,若年層を除いて有意な増加傾向がみとめられた。

[男性]
 40~49歳: 3.9%,9.0%,9.3%,13.4%,9.0%,9.0%,6.7%,7.8%,10.4%,8.3%,12.4%(P for trend=0.05)
 50~59歳: 8.22%,21.7%,25.3%,25.9%,18.3%,17.1%,18.9%,17.3%,16.3%,23.1%,28.1%(P for trend<0.001)
 60~69歳: 8.5%,36.0%,47.2%,41.2%,33.8%,36.6%,32.4%,32.8%,32.7%,35.2%,38.0%(P for trend<0.001)
 70~79歳: 3.8%,50.6%,56.1%,54.2%,50.0%,46.0%,48.9%,40.7%,45.0%,46.3%,51.3%(P for trend=0.007)
[女性]
 40~49歳: 2.8%,5.3%,7.6%,9.3%,5.6%,5.8%,4.8%,6.3%,4.3%,5.9%,6.3%(P for trend=0.17)
 50~59歳: 6.5%,14.3%,22.6%,24.0%,17.3%,16.4%,14.6%,12.6%,15.4%,15.6%,13.3%(P for trend=0.13)
 60~69歳: 8.7%,34.6%,42.2%,35.4%,29.8%,32.4%,35.1%,31.7%,32.9%,29.3%,31.7%(P for trend<0.001)
 70~79歳: 11.8%,49.4%,69.7%,55.9%,53.2%,43.5%,41.7%,47.1%,47.1%,55.5%,52.0%(P for trend=0.003)

これにともなって,高血圧(140 / 90 mmHg以上または降圧薬服用)の有病率が男性では76.9%(区分1)→60.0%(区分11),女性では67.7%→53.8%に低下するとともに,降圧薬を服用している高血圧者におけるコントロール良好な人の割合が,男性では5.9%→56.3%,女性では5.0%→60.2%と,それぞれ顕著に増加した。

◇ BMIの推移
区分1から区分11にかけてのBMI(kg/m2)の推移は以下のとおりで,40~49歳の女性を除いて,すべての性・年齢層で有意な増加傾向がみとめられた。

[男性]
 40~49歳: 22.8,23.1,23.5,23.4,23.3,23.6,23.6,23.9,24.3,24.6,24.7(P for trend<0.001)
 50~59歳: 22.4,22.8,23.1,23.0,23.1,23.4,23.4,23.8,24.0,24.1,24.2(P for trend<0.001)
 60~69歳: 22.2,22.2,22.6,22.4,22.4,22.8,22.7,23.3,23.7,23.7,24.0(P for trend<0.001)
 70~79歳: 21.8,22.0,22.4,21.8,21.9,22.2,22.3,22.9,23.2,23.1,23.3(P for trend<0.001)
[女性]
 40~49歳: 23.1,23.5,24.0,23.6,23.7,23.5,23.6,23.5,23.3,23.2,22.9(P for trend=0.95)
 50~59歳: 23.0,23.7,24.4,24.1,24.1,24.4,24.2,24.3,24.3,24.1,23.8(P for trend=0.005)
 60~69歳: 23.1,23.7,24.1,23.9,24.0,24.3,24.1,24.8,25.0,24.6,24.5(P for trend<0.001)
 70~79歳: 23.3,23.3,23.6,23.6,23.6,24.3,23.9,24.4,24.5,24.4,24.2(P for trend=0.003)

◇ 肥満の有無別にみた高血圧の割合の推移
区分1から区分11にかけて,肥満をあわせもつ高血圧者の割合(60~69歳)は,男性で10.5%→23.1%,女性で18.8%→25.0%と増加していた。一方,肥満のない高血圧者の割合(60~69歳)は,肥満をあわせもつ高血圧者の割合より高いものの,男性で65.3%→37.3%,女性で47.3%→28.7%と,経時的には低下していた。
区分11において,肥満の有無ごとにみた高血圧者の割合を比較すると,40~49歳の男女を除くすべての年齢層で,肥満をあわせもつ高血圧者よりも肥満のない高血圧者のほうが多かった。


◇ 結論
秋田県井川町の一般住民を対象とした前向きコホート研究のデータを用い,1963年から2013年にかけての50年間で,血圧ならびにBMIがどのように変化したかを長期的に検討した。その結果,全体的に,収縮期血圧は顕著な低下を示している一方で,BMIや,肥満をあわせもつ高血圧者の割合は経時的に増加していた。ただし2009~2013年においても,肥満のない高血圧者の数はほとんどの年齢層で肥満の高血圧者より多かったことから,肥満の高血圧者とともに肥満のない高血圧者も,依然として血圧コントロールの重要なターゲットであることが示唆された。


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