[2008年文献] 1990年代の脳卒中発症率は,心筋梗塞発症率にくらべて顕著に高い
日本人一般住民を対象とした1990年代の多施設前向きコホート研究における,全脳卒中と各病型,ならびに心筋梗塞の発症率の報告。脳卒中の年齢調整発症率(10万人・年あたり)は男性311.5,女性221.0と依然として高く,また心筋梗塞の発症率(10万人・年あたり男性83.2,女性30.9)にくらべて顕著に高い状況に変わりはなかった。わが国では,いまだ脳卒中の疾病負荷が心筋梗塞よりもはるかに大きいことがあらためて裏付けられた。
Ishikawa S, et al. Incidence of total stroke, stroke subtypes, and myocardial infarction in the Japanese population: the JMS Cohort Study. J Epidemiol. 2008; 18: 144-50.
- コホート
- JMSコホート研究の12コホート(岩泉,多古,大和,久瀬,高鷲,和良,佐久間,北淡,作木,大川,相島,赤池)。
1992年4月~1995年7月にベースライン健診を受けた12490人のうち,追跡調査に同意しなかった95人,ならびに追跡不能となった7人を除外した12388人(男性4869人,女性7519人)を平均10.7年間追跡。
追跡率は99.2%。 - 結 果
- ◇ 対象背景
平均年齢男性55.2歳,女性55.3歳,血圧131.4 / 79.2,128.2 / 76.3 mmHg,総コレステロール184.9,196.7 mg/dL,トリグリセリド108.8,95.6 mg/dL,HDL-C 48.8,52.6 mg/dL,BMI 23.0,23.2 kg/m2,ベースライン時喫煙率50.4%,5.5%,ベースライン時飲酒率75.1%,24.9%,脳卒中既往1.3%,0.7%,心筋梗塞既往0.8%,0.3%,降圧薬服用9.3%,11.5%,糖尿病治療薬服用2.2%,1.6%,脂質低下薬服用1.2%,1.9%。
◇ 脳卒中および心筋梗塞の発症率
追跡期間中の脳卒中発症は男性229件,女性221件で,うち脳内出血が51件,51件,脳梗塞が165件,125件,くも膜下出血が13件,44件,病型不明が0件,1件であった。
心筋梗塞の発症は男性64件,女性28件だった。
脳卒中とその各病型,ならびに心筋梗塞の年齢調整発症率(10万人・年あたり)は以下のとおり。
全脳卒中: 男性311.5,女性221.0
脳内出血: 65.6,39.4
脳梗塞: 225.8,136.1
くも膜下出血: 18.7,38.8
心筋梗塞: 83.2,30.9
◇ 年齢層ごとの脳卒中および心筋梗塞の発症率
39歳以下,40~49歳,50~59歳,60~69歳,70歳以上における脳卒中の粗発症率(10万人・年あたり)は,男性でそれぞれ19.0,127.3,266.6,765.2,1375.5,女性でそれぞれ14.2,41.2,184.0,420.5,1230.4と,年齢とともに発症率が高くなっていた。これは,脳卒中の病型ごとにみても同様であった。
39歳以下,40~49歳,50~59歳,60~69歳,70歳以上における心筋梗塞の粗発症率(10万人・年あたり)は,男性でそれぞれ19.1,16.8,80.2,202.1,424.3,女性でそれぞれ0.0,0.0,25.5,45.8,217.1と,年齢とともに発症率が高くなっていた。
◇ 結論
日本人一般住民を対象とした1990年代の多施設前向きコホート研究における,全脳卒中と各病型,ならびに心筋梗塞の発症率の報告。脳卒中の年齢調整発症率(10万人・年あたり)は男性311.5,女性221.0と依然として高く,また心筋梗塞の発症率(10万人・年あたり男性83.2,女性30.9)にくらべて顕著に高い状況に変わりはなかった。わが国では,いまだ脳卒中の疾病負荷が心筋梗塞よりもはるかに大きいことがあらためて裏付けられた。