[2007年文献] 危険因子の保有状況は治療中高血圧でも悪い

日本人一般住民を対象とした大規模コホート研究において,正常血圧,治療中高血圧,非治療高血圧における危険因子の状況を比較した。その結果,正常血圧にくらべ,高血圧の人のほうが,治療の有無にかかわらず心血管疾患の危険因子の値が悪いことが示された。

Ishikawa S, et al. Blood pressure categories and cardiovascular risk factors in Japan: the Jichi Medical School (JMS) Cohort Study. Hypertens Res. 2007; 30: 643-9.pubmed

コホート
JMSコホート研究の12コホート(岩泉,多古,大和,久瀬,高鷲,和良,佐久間,北淡,作木,大川,相島,赤池)。
1992~1995年にベースライン健診を受け,血圧のデータがある11,302人(男性4,415人,女性6,887)。
平均年齢は男性55.2歳,女性55.3歳で,血圧は131.4 / 79.2 mmHg,128.1 / 76.3 mmHg。

血圧および治療状況については,以下のように定義した。
   正常血圧: 収縮期血圧(SBP)<140 mmHg,かつ拡張期血圧(DBP)<90 mmHg
   治療中高血圧: 血圧値にかかわらず,降圧薬治療を受けている
   非治療高血圧: 降圧薬治療を受けておらず,SBP≧140 mmHgまたはDBP≧90 mmHg
結 果
正常血圧,治療中高血圧,非治療高血圧の割合はそれぞれ以下のとおり。
   全体: 65.4 %,11.6 %,23.0 %
   男性: 62.8 %,10.2 %,27.0 %
   女性: 67.1 %,12.5 %,20.4 %

◇ 危険因子の保有状況
・ 男性
治療中高血圧の人で正常血圧よりも有意に高い値を示したのは,トリグリセリド,血糖,第VII因子凝固活性,BMI,身体活動指数。
非治療高血圧の人で正常血圧よりも有意に高い値を示したのは,総コレステロール,トリグリセリド,血糖,BMI。

正常血圧,治療中高血圧,非治療高血圧における各危険因子の保有状況は以下のとおり(* : P<0.05 vs. 正常血圧,†: P<0.05 vs. 治療中高血圧)。
   総コレステロール(mg/dL): 183.1,186.6,188.4*
   HDL-C(mg/dL): 48.7,48.6,49.4
   トリグリセリド(mg/dL): 102.5,122.1*,117.1*
   血糖(mg/dL): 102.8,109.8*,110.2*
   リポプロテイン(a)(mg/dL): 12.9,11.5,11.5
   フィブリノーゲン(mg/dL): 244.3,240.2*,241.0
   第VII因子凝固活性(mg/dL): 107.9,111.4*,109.9
   BMI(kg/m2):22.4,24.2*,23.8*
   身体活動指数(physical activity index): 35.8,34.9*,35.4

・ 女性
治療中高血圧の人で正常血圧よりも有意に高い値を示したのは,トリグリセリド,血糖,フィブリノーゲン,第VII因子凝固活性,BMI,身体活動指数。
非治療高血圧の人で正常血圧よりも有意に高い値を示したのは,総コレステロール,トリグリセリド,血糖,リポプロテイン(a),フィブリノーゲン,第VII因子凝固活性,BMI。

正常血圧,治療中高血圧,非治療高血圧における各危険因子の保有状況は以下のとおり(* : P<0.05 vs. 正常血圧,†: P<0.05 vs. 治療中高血圧)。
   総コレステロール(mg/dL): 194.3,200.9*,203.1*
   HDL-C(mg/dL): 53.2,51.9*,51.5*
   トリグリセリド(mg/dL): 90.0,108.3*,105.2*†
   血糖(mg/dL): 98.9,105.2*,103.3*†
   リポプロテイン(a)(mg/dL): 14.7,13.3,14.9*
   フィブリノーゲン(mg/dL): 248.4,256.1*,250.5*†
   第VII因子凝固活性(mg/dL): 113.7,117.1*,117.0*
   BMI(kg/m2): 22.6,24.8*,23.9*†
   身体活動指数(physical activity index): 31.7,30.9*,31.5

男女とも,脂質異常症,耐糖能異常,メタボリックシンドロームの割合,喫煙率は,正常血圧にくらべて治療中高血圧および非治療高血圧で有意に高かった。


◇ 結論
日本人一般住民を対象とした大規模コホート研究において,正常血圧,治療中高血圧,非治療高血圧における危険因子の状況を比較した。その結果,正常血圧にくらべ,高血圧の人のほうが,治療の有無にかかわらず心血管疾患の危険因子の値が悪いことが示された。


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